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2008年02月25日(月) 18時37分

架空診療で2億円受給 複数医師名義貸しの疑い 朝日新聞

 クリニックの経営実態がないのに患者を診療したように装い、診療報酬をだまし取ったとして、警視庁は、東京都渋谷区代々木1丁目、元医療コンサルタント会社経営南部美幸容疑者(53)と従業員の男女2人を詐欺容疑で逮捕したと25日発表した。南部容疑者は都内と千葉県内で計四つのクリニックを実質的に経営。昨年9月までの2年9カ月間に、架空請求で約2億2000万円を不正受給したとみられる。同庁は、複数の医師がクリニックに名義を貸していた疑いもあるとみて、解明を進める。

 組織犯罪対策1課と中野署の調べでは、南部容疑者らは昨年4〜9月に14回、経営する「東新宿クリニック」の診療報酬明細書(レセプト)に架空の患者名や診療内容を記載し、都国民健康保険団体連合会から計約17万7000円を詐取した疑い。南部容疑者は容疑を否認しているという。

 南部容疑者は04年10月以降、新宿区に「東新宿」「新宿センター」「新宿西」、千葉県浦安市に「新安」の計四つのクリニックを実質経営。保健所に開設者として別の病院や私立大学に勤務する医師4人を届け出ていた。医師には、開設者としての報酬を数十万円ずつ払っていたという。

 これらのクリニックでは、診療は行われていなかったとされる。診療報酬の架空請求に使ったレセプトの請求者は各クリニックの開設者の医師名になっていた。レセプトに必要な患者の保険番号は、南部容疑者の会社の従業員らが、健康用品販売の顧客や知人から借りていたとみられる。集めた保険番号は延べ5000人分以上にのぼる。

 請求者になっていた医師4人は警視庁の事情聴取にクリニックの開設者になったことは認めたうえで、「診療したことはない」「架空請求については全く知らない」などと説明しているという。

 都国民健康保険団体連合会は「診療報酬の請求だけで月約550万件ある。レセプトが書類上整っていれば、架空請求を見抜くのは難しい」としている。 アサヒ・コムトップへ

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