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2008年02月24日(日) 22時26分

新銀行東京、乱脈融資?「回収問わず報奨金」最大200万円産経新聞

 東京都が1000億円を出資して設立、多額の累積赤字を抱える「新銀行東京」が開設当初、融資を進めた行員に対し、融資回収を問わず最大200万円の報奨金を出していたことが24日、分かった。現経営陣はこうした制度で進めた旧経営陣の“乱脈融資”が経営を圧迫した原因とみており、刑事、民事両面から追及する方針。一方、都の400億円の追加出資提案をめぐり都議会で26日から論戦がスタートするが、追加出資の効果などが焦点となりそうだ。

■乱脈経営

 今年1月下旬、都庁知事執務室にいた石原慎太郎知事の元に1本の電話がかかってきた。相手は新銀行幹部の一人で、銀行が直面する危機的な経営状況を約1時間にわたって訴えた。

 「とうとうくるべきところまできた。いろいろと調べてみたら経営がむちゃくちゃだ、本当に」。電話を切った石原知事は険しい表情で側近にこう漏らしたという。

 石原知事が指摘する経営上の問題とは、新銀行発足当時の経営陣が行ってきた「常識はずれの融資」(関係者)を指す。

 旧経営陣は「半年つぶれない会社だったらどんどん貸せ」と号令をかけたとされ、デフォルト(債務不履行)を急激に増やしていった。

 さらに、焦げ付きを問わず、融資実行の件数や額に応じて行員には最大200万円の報奨金が支給され、質の悪い融資が膨らんでいった。

 同行の元行員は「朝礼で最高幹部が『これから景気はもっと良くなる。会社(中小企業)がつぶれるはずがない』と豪語していた。とにかくイケイケ路線で、止めようとした幹部行員もいたが、変わらなかった」と証言した。

■下方修正

 新銀行東京の累積赤字は、昨年9月中間決算で936億円。今年3月末には1000億円程度に膨らむ見通しで、石原知事はこれまで「いま立て直さないと債務超過になって信用問題になる。つぶすわけにはいかない。つぶしたら都民にもっと迷惑がかかる」と強調。かつて政府が数兆円の公的資金を投入して都銀を救済した例を引き合いに出して追加出資への理解を求めている。

 仮に自主廃業の道を選ぶとしても、必要な費用は総額で1000億円を超える見通しで、ブリッジバンク(承継銀行)も必要となる。追加出資のほうが安上がりという事情もあるとみられる。

 新銀行東京は20日、新たな再建計画を発表。行員数を450人から120人に減らし、6店舗を1店舗に集約するなど大幅なスリム化を図り、平成23年度の黒字化を目指すとした。

 だが昨年6月、21年度の黒字化を目指した新中期経営計画を策定したばかり。わずか半年余りでの撤回だけに、「再建計画は説得力に乏しい。戦いを放棄して生き延びるために籠城(ろうじょう)しているだけ」(民主都議)との見方もある。

■波乱含み

 都議会では、設立のための1000億円出資に賛同した自民、公明、民主の動向も焦点となる。

 石原都政を支え続けてきた自民は追加出資を容認する方針だが、公明は「議案への賛否は白紙」として、経営実態を独自に調査するという。民主は追加出資の根拠などを追及し、いまのところ、400億円を盛り込んだ補正予算案に反対の構えを見せている。

 都幹部は「正直、議会答弁は苦しい。ただ、信用不安を考えると、行政として銀行を破(は)綻(たん)させることはできない」と苦しい胸の内を明かす。

 とはいえ、与野党双方から「400億円が補正予算案として当初予算案とは別に出てきたのは好都合。場合によっては追加出資だけ否決する手もある」との声も漏れる。

 一方で、一部では「都議の紹介で融資を実行して焦げ付いた案件もあるのでは…」との憶測も飛び交う。都議会での審議は波乱含みとなりそうだ。

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