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2008年02月23日(土) 05時55分

皇太子さま、48歳に 参内「心掛けて参りたい」朝日新聞

 皇太子さまは23日、48歳の誕生日を迎え、これに先立って東京・元赤坂の東宮御所で記者会見した。長女・愛子さまが天皇、皇后両陛下を皇居に訪問する「参内(さんだい)」の少なさに言及した羽毛田(はけた)信吾・宮内庁長官の発言を受けて、「(参内を)できる限り心掛けてまいりたい」と語った。「家族のプライベートな事柄」だとして、それ以上の詳しい説明はなかった。

 愛子さまと両陛下の交流については、天皇陛下が06年12月、愛子さまと会う機会が少ないのは「残念なこと」と発言。皇太子さまは昨年2月、「お会いする機会を作っていきたい」と答えた。だが、羽毛田長官は今月13日の会見で、「ご参内の回数は増えていない」「発言なされたからには実行を伴っていただきたい」と異例の指摘をしていた。

 会見で皇太子さまは、長官発言への感想を尋ねられた。「両陛下の愛子に対するお心配りは、本当に常にありがたく感謝を申し上げております」と述べるにとどまり、家族内の問題として「立ち入ってお話をするのは差し控えたい」と説明した。

 療養中の雅子さまについては、公私を問わず活動の幅を広げるよう努力していると最近の様子を紹介。「今後ともしっかりと支えていきたい」と思いやりを示した。春に小学校に入学する愛子さまには「新しい環境の中での生活を元気に始めてくれることを願っています」と語った。

 ■ご一家での訪問、1年間で十数回

 羽毛田長官が「苦言」を呈した皇太子ご一家の参内の少なさ。一体どれほどの回数だったのか。

 朝日新聞の取材によると、昨年12月までの1年間で、皇太子さまが愛子さまを連れて参内したのは13、14回はある。大半は皇室行事に伴ったり両陛下側が招待したりしたもので、皇太子さまの発意による訪問は1月、3月、8月の3回だった。

 一方、年末年始に続いた皇室行事には、雅子さまは体調を考慮して大半を欠席した。「大正天皇例祭の儀」や「元始祭の儀」などの祭儀のほか、「講書始の儀」「歌会始の儀」といった恒例行事は皇太子さまだけが参加した。

 元日の「新年祝賀の儀」は午前だけ参加したが、東宮御所に戻った後に両親らを東宮御所に招いたことが報道され、宮内庁内でも批判の声がくすぶった。

 私的な外出は活発だった。12月には都内で買い物やイルミネーションの鑑賞、ミシュラン東京版の三つ星レストランで夕食。1月にも東京・高輪の水族館をご一家で楽しんだ。こうした動きは週刊誌やネットで批判的に取り上げられた。

 米AP通信は今月初め、都内のレストランでの食事など雅子さまの私的活動に関する記事を配信。英国のインディペンデント紙やタイムズ紙も独自に雅子さまを特集。外国メディアの報道がご一家の動向を世界に発信し、反響が広がった。

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「愛子さまと会う機会」をめぐる発言

06年12月 天皇陛下「残念なことは、愛子は幼稚園生活を始めたばかりで、風邪を引くことも多く、私どもと会う機会が少ないことです。いずれは会う機会も増えて、うち解けて話をするようになることを楽しみにしています」

07年2月 皇太子さま「天皇陛下の愛子に対するお気持ちを大切に受け止めて、これからも両陛下とお会いする機会を作っていきたいと思います」

08年2月 羽毛田長官「事実としてみます限り、ご参内の回数は増えていない」

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 ■もっと語っていただきたい

 〈解説〉天皇と皇族方に仕える立場の宮内庁長官が、皇太子さまに、家族関係で苦言を呈するという前代未聞の事態はなぜ起きたのか。

 関係者によると、長官は昨年暮れから何度か東宮御所に足を運び、皇太子さまと話し合いを重ねていた。

 雅子さまの「適応障害」の療養は5年目。依然として主治医の詳しい説明や見通しは示されない。皇太子さまと雅子さまに厳しい意見が宮内庁に寄せられた。国内の雑誌だけでなく欧米紙でも大きく報じられた。

 ここ数年、天皇陛下は皇室の基本的な姿勢について皇太子さまや国民に様々にメッセージを発してきた。しかし皇太子さまからは、納得の行く説明がなく、とりわけ皇太子さまが自身の言葉の重みを感じているのかどうかと心痛は深まるばかりだったという。

 皇太子家を支える東宮大夫を飛び越えて、宮内庁の長官が皇太子さまと直接話し合うこと自体が異例だ。それでも、皇太子さまには事態の深刻さが伝わらなかった。天皇陛下の心痛や危機感に思いが届かない様子だったとみられる。異例の「苦言」会見に長官が踏み切ったのは、思いあまってのことだったようだ。

 会見で長官は「ご自身のご発言は大切に」「実行が伴うように」と6回繰り返した。真意は「『綸言(りんげん)汗の如(ごと)し』と身を挺(てい)して基本姿勢をいさめることにあった」と複数の関係者は言う。天子の言葉は糸のように細くとも、汗のように二度と取り返しがつかない。中国の古典から生まれた、君主への戒めである。

 非難を覚悟の長官発言を受け、今回の誕生日会見は注目を集めたが、皇太子さまは「家族内のこと」と繰り返してコメントを避けた。しかし、問われているのは「皇居と東宮の内輪もめ」といったレベルのことではなく、天皇と皇室のあるべき姿をめぐる根の深い問題である。

 皇室内の不協和音を望む人はいないだろう。両陛下とご夫妻で対話が進んでほしい。皇太子さまには今後も誠意ある言葉と行動でこたえ、説明責任を果たし、自らが描く将来の皇室像を積極的に語ることを期待したい。(編集委員・岩井克己)

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