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2008年02月23日(土) 18時43分

キューバ新指導部、若手の進出焦点 24日に選出朝日新聞

 フィデル・カストロ国家評議会議長(81)の退任を受け、キューバの新指導部が24日に選ばれる。59年のキューバ革命を戦った「革命世代」の次にあたる「第2世代」が、どのくらい進出するかが焦点だ。後任の議長には、カストロ氏の弟で革命世代であるラウル・カストロ国家評議会第1副議長(76)がほぼ確実と見られているが、第2世代が多く登場するようであれば、改革に向け準備が進む可能性もある。

 「自分が死んだら弟が直ちに指導者になる」

 カストロ議長は、すでに85年のインタビューでラウル氏を後継に指名。憲法上も、議長に急変があった場合は第1副議長の昇格が規定されており、ラウル氏が最有力であることに疑いはない。

 ラウル氏はもともと、バチスタ独裁政権下に若くして社会主義政党に入党した筋金入りの共産主義者。闘争の幕開けとなった53年のモンカダ兵営襲撃から兄と行動をともにしてきた。政治の表舞台で光を浴びる兄の陰で一貫して軍を統率、治安に目を光らせてきた。

 米国と敵対するキューバは、国の隅々にまで防衛組織を張り巡らせた「人民軍」の国。軍部の掌握力は指導者に不可欠な要素だ。

 一方で、軍は観光産業などビジネスに広く手を染めて現実感覚を持つといわれ、ラウル氏自身も柔軟な考えの持ち主とされる。06年7月末に緊急手術を受けた議長から権限の委譲を受けて1年半、暫定議長として政権運営もそつなくこなした。日常生活で直面する問題について、国民の不満を吸収するための話し合いを全国の職場で展開。国民の間の「経済改革」への期待は高い。

 だが、キューバ駐在の外交筋や外国人記者の間では、「第2世代の登用の可能性もありうる」との見方がある。候補の筆頭が、カルロス・ラヘ国家評議会副議長(56)だ。旧ソ連崩壊後の90年代前半、外資導入や自営業の拡大など経済改革を進めた際の立案者といわれる。議長が病に倒れた後、内外の国際会議に何度もキューバ代表として登場しており、地元メディアではラウル氏以上に露出が目立っている。

 「ラウル氏も高齢で、政権の安定性を考えればラヘ氏の議長就任は排除できない」(キューバ人記者)。議長登用はなくとも、ラウル氏の後任として第1副議長への昇格は有力視されており、集団指導体制の中枢を担うのは間違いない。

 ほかに新指導部メンバーとしては、第1世代からは、流暢(りゅう・ちょう)な英語で国連大使も務め、対米関係のこわもての顔として知られるアラルコン国会議長(70)の名が挙がる。ペレス外相(42)が国家評議会副議長に登用されれば、将来的にキューバを担う有力指導層を革命後世代が占め始める象徴となる。

 しかし、カストロ議長が選んだ第2、第3世代の指導層はいずれも、共産党の一党独裁など体制の根幹にかかわる部分では「社会主義路線維持」で一致しており、当面は経済改革がゆっくり進むものと見られている。

 〈議長の選出方法〉 国家評議会は人民権力全国議会(国会)選出の議員31人からなる集団指導機関で、議長が元首。議長ら新指導部の候補者は、職域団体トップで構成する選考委員会が、全国会議員(614人)から意見を聞いて絞り、24日の国会でリストを提示。全国会議員が形式的に投票して決まる。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/international/update/0223/TKY200802230324.html