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2008年02月23日(土) 15時19分

義足で快走、探求 東京・陸上チーム 義肢装具士ら支え朝日新聞

 義足をつけて走りたい——。そんな障害者の願いをかなえるため、義肢装具士の臼井二美男さん(52)らが中心となって作った陸上チーム「ヘルスエンジェルス」が、東京都内で活動を続けている。トップアスリートから初心者まで約60人が一緒に練習している。メンバーの中には今年9月に北京で開催されるパラリンピックで、メダルを狙う選手もいる。

トラックに立ち、笑顔で話す佐藤真海選手(左から2人め)ら=東京都北区の都障害者総合スポーツセンターで

鈴木徹選手(奥)の義足を調整する臼井さん=東京都新宿区で

 東京都北区の都障害者総合スポーツセンターで昨年11月にあった練習会には、約20人が参加した。神奈川県相模原市の中学生(14)は、3歳の時、病気で左足を切断した。昨年夏に父親に誘われ初めて参加。当初はスキップをするような形でしか走れなかったが、臼井さんが付きっきりで教え、きれいな足運びができるようになった。走る時は、拍手や声援がひっきりなしに飛ぶ。「ここで一緒に走るだけでパワーがもらえる気がします」と父親は話す。

 鉄道弘済会・東京身体障害者福祉センターに勤める臼井さんが「ヘルスエンジェルス」の前身となるランニングチームを始めたのは91年。交通事故で右足大腿(だいたい)部を切断した伊藤孝子さんと走る練習を始めた。当時、海外では義足で走る選手もいたが、日本では障害者とスポーツは結びつかない時代だった。約1カ月後、10メートルを全力疾走できるようになった。「空中を飛んでいる感覚だった」と伊藤さんは振り返る。

 「他の人にも同じように走れるようになってほしい」。走りやすく頑丈な義足作りに没頭し、99年「ヘルスエンジェルス」を立ち上げた。足につける装具や、装具に取り付け地面をける板バネは高価で30万円を超えるものもあるが、激しい動きの中で折れたり曲がったりする。練習中は選手と一緒に走り、義足の不具合などを直す。職場の仲間数人も加わり、今では、義肢装具士やスポーツ指導員ら6人がサポートする。

 北京パラリンピックを目指すのは、走り高跳びの鈴木徹選手、走り幅跳びの佐藤真海(まみ)選手(サントリー)ら数人。日本記録を持つ佐藤選手は、1月の練習会で、北京用の義足を試した。「走ることは自分にとって自己表現の場。勝つことで自信を取り戻せた」という。

 北京パラリンピックにはチームから数人が応援に駆けつける。臼井さんも、選手に付き添い、義足の調整をする。「選手と義足が美しく、堂々と見えれば感激です」と話している。 アサヒ・コムトップへ

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