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2008年02月23日(土) 05時56分

皇太子さま会見全文〈下〉朝日新聞

【問3】殿下はこの一年間、愛子さまの御成長をどのように見守られましたか。愛子さまはこの春、学習院幼稚園を卒園し、初等科に進まれます。最近のご成長振りと、御趣味や好きな遊びなどをエピソードを交えて御紹介ください。また、幼稚園2年間の思い出と現在の御心境、小学校生活に寄せる思いも、お聞かせください。

【皇太子さま】2年間にわたった愛子の幼稚園生活も残すところあとわずかとなりましたが、この2年間で心身共に大きく成長したと感じます。幼稚園入園当初は、愛子にとって初めての集団生活でしたが、先生方の温かい御指導の下、すっかり幼稚園生活にも馴染んで、多くの友達もでき、毎日本当に楽しく通園しています。幼稚園生活では父母が子どもと共に参加する行事も、例えば運動会や参観日などですけれども、そういったものの一つ一つが楽しい出来事でした。また、愛子には幼稚園の外にあっても、入園以前からのお友達とも音楽や体操の教室などを楽しんでおり、そのようなときにも成長振りが感じられます。

 この一年間では殊に漢字に興味を持つようになり、自分でいろいろな漢字を書くようになりました。特に人の名前を書くことに関心があるようですが、中には難しい字もあります。遊びごっこでは、家族ごっこなどのごっこ遊びが、今とても好きなようです。普段は、うちの犬やカメをかわいがり、昆虫なども好きで、生き物を大切にしています。また、歌を歌うことが好きで、バイオリンやピアノにも関心を示しています。誕生日などにはいろいろと手作りのものを作って、両陛下や私たちにプレゼントしてくれます。また、愛子と一緒に手を洗っているときに、私が手に石鹸を付けている間に、水を出しっぱなしにしてしまい、愛子に水を止めるように注意されたことがあります。

 4月からは学齢に達し、学習院初等科に入学することになりますが、新しい環境の中での生活を元気に始めてくれることを願っています。皆様にはこれまで愛子の成長を温かく見守っていただいてきておりますことに感謝しております。

【問4】皇室ではこのところ、天皇皇后両陛下の御多忙な公務日程の見直しが検討課題に上っています。両陛下の公務の現状と皇室の公務分担のあり方について、殿下のお考えをお伺いします。

【皇太子さま】このことについては、以前からもお話ししていますように、すべての公務は「天皇陛下をお助けしつつ、国民の幸福を願い、国民と苦楽を共にしていく」という皇室のあるべき姿が基礎にあります。天皇陛下の御公務を拝見していると、もちろん国事行為としての御公務がおありになるわけですけれども、それに加えて、天皇というお立場であるがゆえに公平性などが重んじられて、式典や、皇居の中での外からは見えないところでのご公務なども随分おありになると思います。陛下の御年齢を考えますと、陛下のお仕事の全体の量をよく把握しながら、御公務の調整をしていくことは大切なことと思います。私としては、陛下がもう少しお休みになれる機会をお作りし、ごゆっくりしていただくことを周囲が考える必要があると思います。この辺のことは、周囲が、陛下とよく御相談しつつ、陛下のお気持ちに沿う形で事を進めていくことが大切と考えます。

【問5】殿下の御公務についてお聞きします。殿下は以前から世界の水問題に関心を持たれ、昨年はアジア・太平洋水サミットに参加されたほか、国連の諮問委員会の名誉総裁に就任されました。こうした活動を踏まえ、改めて世界の水問題についての殿下の思いをお聞かせください。水問題に関する御活動は、今後の御公務や研究活動にどう生かされますか。

【皇太子さま】最初にもお話しましたが、環境問題は今や世界共通の関心事となっていると言っていいと思います。水の問題も、今後、先進国・開発途上国を問わず国際社会が一体となって真剣に取り組んでいかなければならない最重要課題の一つです。私も国連「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁という立場で、今の自分に何ができるかということを考えていかれればと思います。水の問題は、世界が直面している地球温暖化を含む環境問題や資源問題の重要な課題の一つです。今年も、名誉総裁としての立場で水や衛生の問題に関する様々な活動に取り組んでいきたいと思っていますし、これまで以上にこの問題についての理解を深めていくつもりです。その意味でも昨年12月の第1回アジア・太平洋水サミットへの出席は、水問題について学ぶとても良い機会になりました。ヒマラヤの氷河が溶けることにより、氷河の下流域に住む人々が洪水の被害に遭うことが現に起こっていること、海面上昇に伴い太平洋のツバルなど島嶼国では水没の危機にさらされている国があること、さらに、海面の上昇は、井戸の飲み水に塩分が混入する結果を招いていることなどです。国連のまとめによれば、世界では11億人が安全な水を飲むことができず、このうちの約60パーセントがアジア・太平洋地域で暮らしており、トイレなどの衛生施設を持たない人が世界では26億人で、その70パーセントがアジア・太平洋地域で占められているということです。このような現実を直視し、皆で叡智を結集して、力を合わせて解決策を見いだしていくことが重要であると思います。

 私自身としては、引き続き水運の歴史、また、日本人が水とどのようにかかわってきたかという歴史を研究することはもちろん、日本国内でも水や水管理に関係のある施設や場所などの視察も行いたいと考えています。また、国連「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁として、今後の諮問委員会の活動に関心を持ちつつ、水の問題をめぐる様々な動きに関心を寄せていきたいと思っております。

(関連質問)

(問1)これまでの質問と直接関係しないことになって大変恐縮なんですが、国民の関心の大変高いことだと思いますので、あえてお聞きさせていただきます。先日、羽毛田長官が殿下の御所への参内の回数について異例の発言をなさいました。皇族にお仕えする立場である宮内庁の長官が、直接殿下に、言葉は微妙ですけれども、苦言のようなことを申し上げた。このことについては我々記者だけでなく、多くの国民も衝撃と共に多少の違和感というものを感じたと思うんですが、このことに関して殿下の御感想をお聞きしたいと、それともう一つ、これは私見になってしまうのかもしれませんが、長官が御自分の一存だけであの発言をされたとは、私には到底思えないんですが、皇室の御家族の、御家庭内のことをああした公式の場所で発言せざるを得ない、こういう状況が今の皇室の御家庭の中にあるというこの現状をどのように受け止めていらっしゃるのかお聞かせください。

【皇太子さま】両陛下の愛子に対するお心配りは、本当に常に有り難く感謝を申し上げております。御所に参内する頻度についてもできる限り心掛けてまいりたいと思っております。家族のプライベートな事柄ですので、これ以上立ち入ってお話しをするのは差し控えたいと思います。

(問2)今の関連質問にまた関連するような質問で恐縮でございますが、長官会見の後に、皇太子様は両陛下にお会いになっていらっしゃると思うんですが、その際に、こういうお話、話題があったのかどうかということをお聞きしたいということと、それと殿下の今のお話なんですが、やはり国民が非常に気にしていると思うんですね、そこのところで行かれない理由というのは、正に御家庭内の問題とか、いろいろとございましょうけれど、ただやはりそこのところをもうちょっと、なんというか抽象的でも結構なのですが、殿下のお口から直接国民の方に説明していただくと、国民は安心するんではないかなというふうに思いますんで、その2点をできたらお答えいただければと存じます。

【皇太子さま】そうですね、今もお話しましたように、これは本当に家族の内の事柄ですので、こういった場所での発言は差し控えたいというふうに思っております。

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