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2008年02月22日(金) 11時11分

金融機関などからの不審取引通報15万件 99件を摘発朝日新聞

 07年に金融機関などから、不審な取引として警察などに届けられた取引情報は前年比約4割増の15万8041件で、過去最多だったことが、警察庁のまとめで分かった。これらを端緒に摘発した事件も年間99件で前年の約2倍となった。資金洗浄(マネーロンダリング)対策の柱となる犯罪収益移転防止法は3月に全面施行される。同庁は「通報義務を課す業種が広がり、資金洗浄がしにくくなるだろう」としている。

 「疑わしい取引」の届け出件数は00年の7000件余りから年々増加。昨年の届け出の約6割にあたる9万8629件が、警察や検察庁などの捜査機関に提供され、このうち907件の取引情報を端緒に99件が摘発された。

 内訳は詐欺が81件と最多で、貸金業法・出資法違反(3件)や文書偽造(2件)もあった。5件が犯罪収益の隠匿事件に発展。また約2万3000件の取引情報が暴力団など反社会的勢力の資金源解明や事件の裏付け捜査などに活用された。

 情報分析を担う資金情報機関(FIU)が金融庁から警察庁に移管された昨年4月以降、海外から26件の取引情報が寄せられ、3件の取引情報を提供したという。

 また、昨年摘発された資金洗浄事件は過去最多の184件(前年比40件増)で、約3分の1の65件で暴力団関係者が関与していた。犯罪収益の仮装・隠匿が142件、犯罪収益の収受が42件だった。25件の犯罪収益計約3億1000万円を没収するため保全命令を受けた。少なくとも7件で来日外国人がからみ、日本に住むナイジェリア人らが多くの銀行口座を開設し、海外から詐取金を振り込ませ資金洗浄していた事件もあった。

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 〈犯罪収益移転防止法〉 国際的な資金洗浄対策を進める政府間機関「金融活動作業部会」(FATF)の勧告に基づき、昨年4月に一部施行。3月1日の全面施行で、これまで対象だった金融機関に加え、宝石業や不動産業、私設私書箱業者などにも対象が拡大される。本人確認や取引記録を7年間保存し、疑わしい取引を監督官庁に届け出ることが義務づけられる。弁護士や公認会計士など五つの「士業」については届け出の対象外。

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