記事登録
2008年02月22日(金) 10時24分

イージス艦、海保通報は16分後 幹部「遅すぎる」朝日新聞

 海上自衛隊のイージス護衛艦「あたご」と漁船清徳丸の衝突事故で、海上保安庁に最初の連絡が入ったのは、事故発生から16分後だった。88年の潜水艦「なだしお」の事故では通報が遅れて批判を浴びた海自。清徳丸に乗っていた父子2人の捜索が難航するなか、、今回も「なぜもっと早く通報できなかったのか」との批判が出始めている。教訓は生かされなかったのか。

 「(通報が早ければ)少なくとも十数分は早く立ち上がれた。早期発見の可能性はその時間の分だけ大きくなった」

 21日の定例会見で、第3管区海上保安本部(横浜市)の島崎有平本部長はこう発言した。

 事故発生は19日午前4時7分ごろ。あたごが無線で3管に「艦首部分が漁船にぶつかった。漁船が二つに割れた」と通報したのは同23分だった。

 海保が、東京・羽田にあるヘリコプターや巡視船艇に現場に向かうように命令したのは通報から4分後の同27分。比較的近くにいた巡視船艇などが順次出発し、ヘリも必要な装備を調え、特殊救難隊員3人を乗せて午前5時5分に飛び立ち、現場には同48分に到着した。発生から約1時間40分後だった。

 海保は、船舶電話や携帯電話からの「118番通報」や無線の受信体制を強化し、船舶運航者らに事故発生の早期通報を呼びかけてきた。それだけに幹部は「遅すぎる。16分間、一体何をしていたのか」といぶかる。

 小人数しか乗っていない船同士の衝突であれば、限られた人数で人命救助にあたらなければならず、結果的に通報が遅れることも想定される。

 しかし、あたごは当時、当直士官ら10人以上が操艦していた。「船体が大きいために衝突の状況を確認するのに一定の時間がかかるのはわかるが、十分に訓練をしていれば手分けして速やかな通報が可能だったのではないか」。海保の幹部はそう指摘する。

 88年に東京湾・横須賀沖で潜水艦なだしおと大型釣り船の第1富士丸が衝突して30人が犠牲となった事故の海保への通報までの時間は21分。なだしおから直接ではなく横須賀地方総監部を経由したために遅れが生じた。今回はあたごから直接通報が入ったのに発生から16分だった。「20年で5分の短縮では、改善されたとは言い難い」と海保幹部は批判的だ。

 防衛省によると、事故時が当直態勢の場合は、当直士官ら幹部が通報を指示するのが基本。人命にかかわる事故の場合、訓令で「直ちに」海保に通報するよう定めているが、時間までは規定していない。自艦の位置情報や、相手船はどうなっているかなど現状把握の必要もあり、最優先の救助活動とともに時間を要するのも現実。夜間航行では、さらに時間が必要になってくる。

 同省幹部は今回の対応について「(必要な作業があり)ある程度の時間がかかった」とする。だが、当直員が複数いたことを踏まえると、海自OBは「時間がかかりすぎとは断じられないが、もう少し早くならなかっただろうか」と話す。省内にも「検証する必要はある」との声もある。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0222/TKY200802210389.html