記事登録
2008年02月20日(水) 00時00分

海外のオンライン・メディアをウォッチする60代ブロガー読売新聞

新サービス紹介からメディア動向中心に

「ブログをやって感じたことは、自分の情報整理に役立つということです」
——ブログをやってみて、わかったことは?

田中 内容次第でアクセス数が大きく違うことがわかりました。動画投稿サイトのユーチューブやポッドキャスティングが始まったときにこれらについて紹介したら、すぐにPVが上がりました。

 全体で言えば、一般受けするテーマを書くと、一年以上前の記事でもいつまでもアクセスがあります。2006年末の「2006年の美人ブロガーは誰?」という柔らかい記事は、その一例です。またグーグルから来るユーザーが専門的で技術的な堅めの記事を好むのに対し、ヤフーから来るユーザーは、エンターテインメント系の明るい話題に反応するという傾向もわかりました。

 ただ、最近では「メディア・パブ」もだんだんアクセス数が減ってきました。今は先のブログ検索サイトのランキングで100位にも入っていないと思います。

——それはなぜですか?

田中 ネタ元の技術系サイトの日本語版が登場し、海外の最新情報を日本語で読めるようになったことが大きいからだと思います。自分がやる必要がなくなりました。

 ただ、自分の知りたい欧米の新聞社サイトの細かい動静などはどこにも書かれていません。半年ほど前からは、こういったメディアの分析記事を中心に書くようにしています。

——欧米の新聞メディアの現状をどう見ていますか?

田中 ユーザー参加型コンテンツ、つまりソーシャル・メディアを積極的に利用していますね。ニューヨーク・タイムズが、ニュース収集サイトの一つである「ブログランナー」を最近買収しましたし、ワシントン・ポストも、ウォール・ストリート・ジャーナルも、ソーシャルメディアサイトとの連携を強化しています。

 アメリカの新聞メディアがオンラインにシフトしたのは、それだけ追い詰められているからだと思います。もともと新聞部数の売上がそれほどでないところに、広告の売上が激減しています。オンラインの広告売上は、まだ絶対額で少ないとはいえ、そちらにシフトせざるをえない状況なのです。

——インターネットに適した報道の形は?

田中 インターネットは、「品質向上に努力はするが、限界はある」というまさに「ベスト・エフォート(最大限の努力)」型のメディアです。

 2007年10月に起きたロサンゼルスの山火事では、地元のロサンゼルス・タイムズは、記者がコミュニケーション・ツールの「ツイッター」を使って、現場から状況を速報していました。この際、グーグル・マップを使って、どの道路は安全かなどの情報も発信していました。

 2008年1月下旬にニューヨーク・タイムズが行った食に関する記事も象徴的です。「マグロに含まれる水銀」をとりあげたレポートで、ニューヨークのすし店やスーパー20店のまぐろを検査した結果を公表。水銀を体内に取り込む影響をいろんな資料にリンクをしているほか、過去20年分の同紙の関連記事にもリンクされていました。紙の新聞では、一つの記事からここまで広げることはできないでしょう。

——日本のメディアはどうでしょう?

田中 まだまだ「インターネットは、紙の補完」というスタンスです。記者にしても、紙に書きたいと強く思っているでしょう。中高年の読者は特に新聞社が新聞紙や新聞社サイトで発信する品質保証型の情報でいいと感じているでしょう。問題は、若い人への情報提供です。新聞社サイトの大半は、外へのリンクがほとんどない「自前主義」が多い。若い人から見れば、閉鎖的です。もう少しソーシャル・メディア的なことをやればよいと感じています。(メディア戦略局 山根章義)

(敬称略)

クラウド・コンピューティング(cloud computing)
 雲のようにつながり、ネットワーク化されているインターネットの中で、端末に制限されることなくソフトウエアを動かしたりデータを利用したりすることができる仕組みのこと。

データ・ポータビリティ(Data Portability)
 異なるサービスでのデータを他のサービス上でも利用できる仕組み。2008年1月に、検索サービス大手のグーグルとSNSのフェースブックが、この仕組みを推進する団体「データ・ポータビリティ・ワークグループ(DataPortability Workgroup)」に参加を表明した。

アド・エクスチェンジ(Ad Exchange)
 広告主が、個人サイトを含めたオンライン・メディアの広告枠に対して入札して出稿するオンライン広告取引システム。「アドブライト(AdBrite)」や「ライト・メディア(Right Media)」などが有名。ヤフーは2007年4月にライトメディアを買収した。「広告マーケット・プレイス」ともいう。

http://www.yomiuri.co.jp/net/interview/20080220nt10-1.htm