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2008年02月20日(水) 13時27分

イージス艦、「後進」間に合わぬ速度 回避措置に疑問朝日新聞

 海上自衛隊のイージス艦「あたご」が、マグロはえ縄漁船清徳丸と衝突し、漁船の乗組員2人が行方不明になっている事故で、あたごが当時、10ノット(時速約18.5キロ)で航行していたことが、防衛省や第3管区海上保安本部(横浜市)の調べで分かった。衝突回避のためにあたごが「後進」に切り替えた際、清徳丸は至近距離に迫っていた。当時の航行速度だと、全速の後進に切り替えても停止するまで数百メートル進むとされ、3管は、あたごが漁船に気づくのが遅れたことに加え、回避措置が適切だったかどうかを調べている。

イージス艦「あたご」の艦首を調べる海上保安庁特殊救難隊員ら=20日午前9時45分、海上自衛隊横須賀基地で

 調べでは、あたごは事故直前、1分間で約300メートル進む約10ノットで千葉県房総半島南方海域を航行していた。あたごが右前方に、清徳丸を発見したのは衝突の約2分前。衝突1分前に清徳丸は右に大きくかじを切り、あたごの航路を横切ろうとするのを見て、あたごは後進をかけたとされる。

 あたごの乗組員は防衛省の調べに対し、「漁船に気づいたが、至近距離で回避が間に合わなかった」と話しているという。

 海上衝突予防法では、一方の船を右側方向に見る船が、相手の船の針路を避けるよう義務づけており、正面からすれ違う場合はお互いが右にかじを切るよう求めている。

 航行中の大型船は後進操作に切り替えても、すぐには止まらず、惰性で前進する。「今回のイージス艦と同クラスの艦船だと14ノット(同約26キロ)で航行中に全速の後進に切り替えても停止に約400メートルかかる」と話す海自関係者もいる。

 一方、清徳丸もあたごに向かって接近していた。速度ははっきりしていないが、一緒に出漁した船長によると、船団は約15ノット(同約28キロ)で航行していた。

 あたごはかじを切らず、後進で衝突を回避しようとしたとみられる。3管は、あたごが後進をかけなければいけない状況になるまで清徳丸と接近したことが事故につながったとみており、19日夜には事故当時の隊員の配置を再現して検証するとともに、捜索で航海日誌などを押収。20日は、隊員の行動を確認するため事情聴取を進めている。また、衝突の詳しい状況を確認するため、特殊救難隊が20日午前、水中に潜るなどしてあたご艦首にある損傷部位を検証した。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0220/TKY200802200120.html