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2008年02月15日(金) 04時13分

マウスの肝臓・胃からiPS細胞、臨床応用に一歩前進読売新聞

 皮膚から様々な臓器や組織の細胞に変化できる新型万能細胞(iPS細胞)を作った京都大学の山中伸弥教授らの研究グループが、マウスの肝臓や胃の細胞からもiPS細胞を作ることに成功した。

 従来のiPS細胞よりがん化しにくく、体の色々な細胞からより安全なiPS細胞を作れる可能性が広がった。臨床応用に向け、さらに一歩前進した。15日の米科学誌サイエンスに発表する。

 山中教授らは、ウイルスを運び役にしてがん遺伝子を含む4個の遺伝子を、人やマウスの皮膚に組み込んでiPS細胞を作った。しかし、マウスのiPS細胞を使った実験では、3割にがんができた。その後、がん遺伝子を含まない方法でマウスのiPS細胞の作製にも成功したが、さらに安全な細胞の作製研究を進めてきた。

 皮膚の代わりとなる細胞として、人でも比較的採取しやすい肝臓と胃に注目。4個の遺伝子を導入する方法でiPS細胞を作ることに成功した。皮膚とは違い、肝臓や胃の細胞で作ったiPS細胞からは、がんはできなかった。3遺伝子でも作ることができた。

 遺伝子の導入に使うウイルスは細胞の核内にある染色体を傷つけてがん化の引き金になる恐れがある。肝臓や胃の細胞では、染色体に入り込むウイルスの数が、皮膚の5〜10分の1にとどまっており、ダメージが少ないため、がん化しないらしい。山中教授は「肝臓や胃でも内視鏡などで細胞を採取でき、臨床応用は可能。さらに良い方法を探っていきたい」としている。

 理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの西川伸一・副センター長は、「どんな組織からでもiPS細胞ができることがわかった。様々な細胞を調べれば、これまで以上に安全で効率よくiPS細胞を作れるだろう」と話している。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080214-OYT1T00759.htm