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2008年02月15日(金) 14時17分

和歌山県が26億円債権放棄へ中小企業融資の回収困難 産経新聞

 和歌山県は15日、同和対策事業などの一環で、中小事業者に融資した中小企業高度化資金のうち、融資先の破綻(はたん)などによって回収の見込みがまったくない26億4200万円を債権放棄する方針を固めた。全国的に同資金の不良債権が膨らむ中で、都道府県の債権放棄額としては最大規模とみられる。

 和歌山県が抱える同資金の延滞債権は平成18年度末で108億円に達しているが、多くは回収が困難とみられ、今後も損失額が拡大する可能性もある。県は2月定例議会に議案として提出する。

 償還指導室によると、債権を放棄するのは昭和47年度から平成8年度までの間、中小事業者の組合など5団体に貸し付けた資金。融資先はいずれも破綻しており、連帯保証人が死亡しているケースや自己破産などのため、このまま債権を持っていたとしても回収できないと判断した。

 このうち紀の川市の豆腐製造業者の協業組合に対しては7、8年度に、同和対策事業枠を使って、豆腐工場の土地・建物代や設備費として計24億円を融資した。その後、資金繰りが悪化し組合は14年に破産した。土地などの資産が競売にかけられたものの、売却額は約1億3000万円にとどまり、融資の9割以上が回収不能となった。

 県の担当者は「融資は正当な手続きに基づいて行われた」と説明し、過去に融資した資金のため、現在の県財政に与える影響は大きくはないとされるが、不良債権の処理に伴い巨額の損失が確定することで、改めて当時の融資審査の甘さへの批判が高まるのは必至だ。

 和歌山県の中小企業高度化資金の融資総額は460億円(18年度末現在)で、長期にわたって返済が滞っているのは34団体の108億7000万円。このうち同和対策事業枠の延滞債権が91億9000万円と大半を占めている。いずれも回収の見込みが立たない状況とみられ、今後も債権放棄をせざるを得ない公算が大きい。

 市民グループ「市民オンブズマンわかやま」の畑中正好事務局長は、「県当局と融資先に何らかの癒着があったことが疑われる。本当に審査がきちんと行われたのか情報が公開されなければ、県民は納得できないだろう」と話している。

 ■中小企業高度化資金とは 都道府県と独立行政法人・中小企業基盤整備機構(旧中小企業総合事業団)が、企業の共同事業に対して低金利や無利子で融資する制度。融資額の3分の2を同機構、残りを都道府県が負担する。都道府県が債権放棄した場合、同機構の融資分を返済する義務はない。

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