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2008年02月14日(木) 17時21分

会話5分で企業の価値算定 逮捕の会計士 ICF事件朝日新聞

 IT関連会社「アイ・シー・エフ(ICF)」の不正な企業買収事件で、買収された広告会社「大阪第一企画」の元オーナーが、企業価値を評価した公認会計士、田中慎一容疑者(35)=証券取引法違反容疑で逮捕=の調査について、「会計士と話したのは5分しかなかった」と大阪府警に説明していることがわかった。田中容疑者による算定前に、ICFの元幹部らが買収額を決めていたといい、買収の正当性を取り繕うためだけのずさんな調査だったと府警はみている。

 田中容疑者はライブドアの監査も担当し、06年に「ライブドア監査人の告白」を出版。社内の内幕を描き、粉飾決算がまかり通るなか、正常化を図ろうとした自身の奮闘ぶりを記した。日本公認会計士協会は昨年11月、こうした著書の出版は信用失墜行為にあたるとして、田中容疑者を戒告処分としている。

 関係者によると、元オーナーが田中容疑者に初めて会ったのは買収方針が公表される約2週間前の04年12月上旬。大阪市北区の喫茶店で、パチンコ情報提供会社「梁山泊」を実質経営する元暴力団幹部、豊臣春国容疑者(57)=同容疑で逮捕=らも同席し、食事をしながら約1時間買収について打ち合わせした。

 この際、田中容疑者が大阪第一企画について元オーナーに尋ねたのは5分ほど。元オーナーは府警に対し「中身は会社概要など基本的なことばかりで、経営状況や将来計画は聞かれなかった」と話しているという。

 田中容疑者が所属する港陽監査法人は、ICFが買収した計16社のうち、04年9月〜05年に連続して8社の算定を担当した。

 調べに対し、田中容疑者は「8億円と算定するよう、ICF側に指示された」と供述。ICF側はこの打ち合わせ後、大阪第一企画を「主要な新聞、雑誌社と取引実績がある」などとして評価額を8億円と公表した。

 府警は、ICF元社長の佐藤克容疑者(32)らが豊臣容疑者に利益をもたらすため、評価額をあらかじめ決めていたとみている。

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200802140044.html