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2008年02月14日(木) 03時01分

田中森一被告「最高裁に従う」、検察幹部ら冷ややか朝日新聞

 弁護士として裏社会とつながり、商社の手形交付をめぐり詐欺罪に問われていた元特捜部検事の田中森一被告(64)が、「地下経済のフィクサー」と呼ばれた許永中被告(60)ともども刑務所に収監される見通しとなった。これまでの取材に、無罪を主張しながらも最高裁の決定には「潔く従う」と語っていた。往時を知る検察幹部らは「彼はやりすぎた」と冷ややかに見つめる。

 昨年6月出版の自伝「反転 闇社会の守護神と呼ばれて」は27万部のベストセラーになり、最近は講演活動や雑誌の取材に追われる「時の人」。著書では、苦学した生い立ちから、大阪、東京両地検の特捜部で数々の汚職事件などを手がけた後、官僚的な検察組織に「うんざり」して辞めるまでの経緯を執筆。88年に大阪で弁護士になってからは、政財界だけでなく、指定暴力団山口組の宅見勝・元最高幹部、許被告ら裏社会と交流したことも明かした。

 「自業自得だと思う。潔く従わなきゃ、しゃあない」。昨年11月、田中被告は最高裁の判断を待つ心境について語った。石橋産業から額面約179億円の約束手形をだまし取ったとされる許被告との共謀は否定し、「(供述)調書が上手に作られとる」と検察捜査を批判。許被告を「人は天下の詐欺師みたいに言うけど、大したプロデューサー」とかばった。

 特捜部経験のある検察幹部は「彼は、やりすぎた。それでみんな離れていった」という。一方、本人を直接知る幹部は「道は踏み外したかもしれないが、人間的には魅力があった」と語った。

 13日夜、「元特捜の鬼検事が語る我が人生」と題した講演会を都内で開いていた。最高裁の上告棄却について「本当? また、あとにしよう」と言い、立ち去った。弁護士資格は、禁固以上の刑が確定すれば失われる。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0214/OSK200802130095.html