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2008年02月13日(水) 08時52分

産科医不足に滋賀県が妙案 “派遣医師”採用産経新聞

 産科医不足のため全国各地の病院で分娩(ぶんべん)受け入れ中止が相次ぐなか、滋賀県は、県職員として新たに採用した産婦人科医を地域の病院に派遣する事業を4月からスタートさせる。労働者派遣法施行令が昨年12月に改正され、医療機関が別の病院への医師派遣ができるようになったため「派遣事業」が可能になった。滋賀県は女性人口に対する産婦人科医数が全国でもっとも少ないが、この全国初の試みで「子供を産みにくい県」脱却をめざす。

 医師派遣事業は「琵琶湖マザーホスピタル」と名付けた。具体的には、県が新たに県立成人病センターに、京大病院勤務の男性のベテラン産婦人科医2人を採用。この2人を、今夏以降それぞれ週1日、産婦人科医の不足で出産への対応が難しくなっている県東部地域の中核医療施設の彦根市立病院に派遣する。

 同病院は平成18年3月、3人の産婦人科医のうち2人が退職し、分娩の受け入れを休止。今月、低リスクの分娩を助産師が受け持つ「院内助産所」を開設し対応しているが、医師派遣が始まれば、リスクの高い分娩も含め受け入れられる幅が広がるという。

 さらに、この2人の医師は、派遣以外では成人病センターで高度医療の研修も行う。計画では2人が講師となって婦人科領域の悪性腫瘍(しゅよう)の治療法などの最新知識を県内の産婦人科医に対して研修し、産婦人科医の知識や技量の向上も図るという。

 厚労省などによると、平成18年の調査で滋賀県は15〜49歳の女性人口に対する産婦人科医の割合が10万人あたり26人で全国最少。また、17年には、出生1000人あたりの乳児の死亡数が3・5人で全国最悪だ。県は彦根市立病院で当面1年間、医師派遣を続け、さらに産婦人科医が不足している他の病院に広げたい考え。県の担当者は「全県的に平等な分娩が可能になるよう対応を急ぎたい」としている。

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■労働者派遣法施行例の改正

 労働者派遣法は派遣事業の適正な運営と派遣スタッフの就業条件の整備、雇用の安定などを守るために昭和60年に制定された。医師の派遣はこれまで、厚労省が指定した僻地(へきち)を除いて認められていなかったが、平成19年12月、同法施行令が一部改正され、産科医など不足している診療科については、国の許可を得たうえで医療機関から医療機関への派遣が可能となった。

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