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2008年02月13日(水) 16時07分

ICF元社長ら逮捕 投資家食い物 40億円利益 LDと酷似の“錬金術”産経新聞

 新興市場に巣くう虚業家たちは、脈絡のない多数の会社を「優良企業」に変身させ、莫大(ばくだい)な金を吸い上げていた。13日、大阪府警捜査4課と証券取引等監視委員会が金融商品取引法違反(偽計)容疑で強制捜査に乗り出したIT関連企業「アイ・シー・エフ」(ICF)は、ライブドアの手口と酷似した“錬金術”を駆使し、40億円に上る利益を上げたという。結局、狂喜乱舞のマネーゲームで泣きを見たのは、一般投資家だった。

 「ICFの傘下に入りませんか」

 平成16年秋、広告会社「大阪第一企画」の元社長(63)はパチンコ情報会社「梁山泊(りょうざんぱく)」グループ実質経営者、豊臣春國容疑者(57)からこう持ちかけられた。豊臣容疑者とは、梁山泊の関連会社が発行する雑誌の広告取引を通じた知り合いだった。

 豊臣容疑者は元社長にこれまでの10倍の売り上げを約束。債務超過状態に陥っていた元社長は「上場企業の傘下となると信用度合いも違ってくる」と納得し、買収に応じたという。

 だが、豊臣容疑者にもICF元社長の佐藤克容疑者(32)にも、第一企画をまともに再生しようとする気はなかった。第一企画の売り上げは一時的に上がったものの、実態は企業価値を高めるためのかさ上げ。最終的には元社長に4500万円を渡しただけで、豊臣容疑者らは第一企画を利用し、5億円以上の利益を上げた。

 ICFの企業買収には常に疑惑がつきまとった。イベント企画、電話受け付け、段ボール販売…。16年4月〜18年1月、何の脈絡もない会社を次々と傘下におさめ、そのたびに大量の自社株を発行、市場で売却した。

 その間、ICFの株価は乱高下を繰り返した。16年4月に27万円台だった株価は同年9月に上場来最高値の104万円を記録。しかし翌月には28万円台まで急落し、一連の買収を終えた18年2月には10万円を割った。

 結局、株価の変動に踊らされた一般投資家の資金が市場から吸い上げられ、さまざまな関係者が40億円を超える利益を手にしたとされる。

 一方、買収企業を“錬金術”の道具として利用した後はあっさりと使い捨てた。17年12月に約13億円で買収した服飾輸入会社はわずか9カ月後に破産するなど、16社のうち4社が破産・解散、9社が売却された。

 ICF関係者によると、当時の経営陣やその知人らが個別の買収案件を持ち込み、佐藤容疑者が可否を決定。その案件ごとの利害関係者が“蜜”を吸ったという。

 当時の買収担当者は「合併理由自体がこじつけで意味の分からないものもあった。担当としても成長性に乏しいと感じることも多かった」と証言したうえで、こう明かす。「社内では買収に伴って幹部がキックバックをもらっていたといううわさはいくらでもあった。あまりにも多くいちいち気にしていなかった」

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