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2008年02月09日(土) 01時36分

神世界事件 警視が霊感商法にかかわるとは(2月9日付・読売社説)読売新聞

 警察の中枢の職にある者が霊感商法に関係していては、対外的にも示しがつかないという判断だろう。

 警察庁と神奈川県警は、同県警の前警備課長(警視)ら計6人を懲戒処分などにした。

 警視は、地方公務員法の営利企業の従事制限違反、信用失墜行為の禁止違反などで懲戒免職とした。現在と前任の2人の本部長は長官訓戒、警備部長は国家公務員法による戒告処分とした。

 警視は、国際テロ対策室長や公安2課長代理などを務め、警察庁に出向の経験もある。枢要ポストに就いてきた幹部が不祥事を起こすようでは、組織のタガが緩んでいる、と見られても仕方ない。警視の処分は無論のこと、本部長の監督責任が厳しく問われたのも当然である。

 県警は昨年末、山梨県に本社を置く有限会社「神世界」や県警の警備課長室などを捜索した。「神世界」の系列下の東京・港区内のサロンが、霊感商法で多額の現金を詐取したとする容疑だ。

 県警によると、「神世界」は傘下企業を通じて多くのサロンを運営し、「ヒーリング」(癒やし)などを誘い文句に客を募っていた。霊視鑑定と称して不安をあおり、お守りなどの霊感グッズを高値で販売したり、除霊の名目で法外な祈祷(きとう)料を取ったりしていた。

 警視は、港区内のサロン経営者の女性と親しい関係にあり、数年前には、サロンの開設資金として770万円を渡している。2005年12月からはサロンの会計担当を務め、その報酬として毎月十数万円を受け取っていた。

 いかがわしい霊感商法に警察幹部がかかわること自体、非常識だ。勤務時間中に頻繁に職場を抜け出して銀行に出かけ、サロンの送金業務などをしていたという。そもそも、警視が警察の仕事をまじめにしていたとは思えない。

 「義兄が会社を設立する。1年後には必ず増える」という架空の投資話で、部下や警察学校教官時代の教え子から1口50万円で金を集め、実際にはサロンの運営資金に回していた。階級社会の肩書を利用した、悪質な手口だ。

 人の心の弱みにつけ込んだ霊感商法による被害が絶えない。損害賠償請求の訴えも相次いでいる。「神世界」に対する県警の捜査は、長期化するとみられているが、不透明な運営の実態や警視の関与を徹底的に解明する必要がある。

 警察幹部の登用や管理のあり方が、課題として残った。幹部が身を律しなければ、組織全体の規律は維持できず、士気も高まるわけがない。警察全体の問題として、再発防止に取り組むべきだ。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080208-OYT1T00963.htm