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2008年02月09日(土) 00時35分

火事、母が投げた乳児をキャッチ ご近所の底力 熊本朝日新聞

 8日午後0時50分ごろ、熊本市東町4丁目にある都市再生機構「健軍団地」3階の無職樋口聖子さん(64)方から爆発音がして出火した。この火事で、5階に住む母親が、布団を手に待ちかまえていた近くの人たちに向けて乳児を投げ下ろし、一人が腕で受け止め、けがはなかった。ただ、飛び降りた母親は背骨が折れ、樋口さんも腰の骨が折れる重傷。鉄筋コンクリート5階建てのうち樋口さん方約60平方メートルが全焼し、4、5階の一部が焼けた。県警と市消防局が、ガス爆発の可能性も含め出火原因を調べている。

 調べでは、けがをした母親は大西千菜美さん(31)。逃げ遅れそうになったため、4階と5階の間の階段踊り場から生後7カ月の長女琉花(るか)ちゃんを投げ下ろし、自分も飛び降りた。地上では、すぐ近くの市立東町中学校の教諭岩本亮一さん(48)や近所の人たち計8人が布団4、5枚を重ねてトランポリンのように張って待機。同中教諭の上野正直さん(43)が両腕でしっかり受け止めた。その直後に大西さんも布団の上に飛び降りたが、着地の際に腰を強く打った。

 岩本さんらによると、出火時に「ズシン」という大きな爆発音がしたため、同中教諭や近所の人たちが駆けつけた。樋口さんが「助けて」と叫ぶのを聞き、岩本さんらが「布団、布団」と呼ぶと、住民らが自室のベランダから布団を投げたり持ってきたりして4、5枚が集まった。

 「誰かいないですか!」と叫ぶと、階段の踊り場から大西さんが琉花ちゃんを抱いて顔を出したため、「大丈夫、子どもを投げていいですよ!」と声をかけた。上野さんは「無我夢中だったが、気がついたら赤ちゃんが腕の中に入っていた」。

 最初は黙っていた琉花ちゃんは、やがて泣き出した。大西さんは重傷を負いながら「子どもを見せて」と琉花ちゃんを抱き、「よかった、よかった……」と繰り返したという。

 樋口さんはこの前に、3階ベランダから地上の植木に飛び降りていた。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0209/SEB200802080017.html