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2008年02月08日(金) 00時00分

バージン諸島の会社利用し株「還流」か ICF疑惑朝日新聞

 IT関連会社「アイ・シー・エフ」(ICF)をめぐる不透明な企業買収疑惑で、本来はアイ社と広告会社オーナーとの間で直接行われたはずの株式交換が、実際には取引直前に広告会社を買収した租税回避地のカリブ海・英領バージン諸島の投資会社との間で行われていたことがわかった。投資会社はアイ社と密接な関係にあったといい、新株がアイ社関係者に還流した可能性がある。大阪府警などはアイ社の経営陣側が投資会社を利用して新株を不正に取得し、売却益を得ようとした疑いがあるとみている。

   

 疑惑が浮上しているのは「アルタリンク投資会社」。アイ社が広告会社「大阪第一企画」(大阪市)を買収すると公表する直前の04年7月に設立された。しかし登記料の支払いが滞り、現在は休眠状態となっている。

 大阪第一企画の買収は04年12月に公表され、同社の発行済みの株式1600株はすべて大阪第一企画の元オーナー夫妻が保有していると明らかにされていた。アイ社は株式交換方式で2365株を新たに発行し、大阪第一企画の全株と交換して完全子会社化するとし、元オーナー夫妻がアイ社の全新株を受け取るとみられていた。

 ところが大阪府警がアイ社の関係先から押収した英文の「株券売買契約書」には、アルタリンクが元オーナー夫妻から大阪第一企画の全1600株を数千万円で買い上げたことが明記されていた。元オーナー夫妻は、アイ社による買収公表後の04年12月から買収が成立する05年2月までの間に署名しており、アルタリンクが買収成立直前に大阪第一企画を乗っ取っていたことになる。

 元オーナーは朝日新聞の取材に対し、「アイ社関係者に英文書類への署名を求められ、意味も分からないまま妻と共に応じた。アイ社の新株は受け取っていないが、数千万円は確かに受け取った」と証言した。

 大阪第一企画の元オーナー夫妻に、アルタリンクに全株を譲渡させるよう働きかけたのは、アイ社関係者だといい、両社は密接な関係にあったとみられる。

 アイ社が新規発行した2365株の時価は8億円相当とされ、株式交換によってアルタリンクにもたらされた格好になる差額はアイ社関係者に流れたとみられる。

 アイ社の関係者は「当時の経営陣側が、新株をひそかに還流させるために、実態を把握しにくい海外のペーパーカンパニーを利用した」と説明。府警などは、当時の経営陣側が株式交換の名目で自社株を買収先の企業側に発行したように装い、最終的に自らの手元に還流させた上で売却益を得ようとしていた疑いがあるとみている。

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200802080036.html