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2008年02月08日(金) 09時48分

ネット覇権争い、日本でも激化 「主戦場」は携帯へ朝日新聞

 米マイクロソフト(MS)の米ヤフーへの買収提案で改めて脚光を浴びたインターネット事業の覇権争い。日本の主戦場は世界でもサービスが先進的と言われる携帯電話のネット市場に移っている。日本での成功は今後の世界展開につながるため、各社の競争は激しさを増してきた。

国内ネット関連事業を巡る関係図

国内の検索サイト閲覧件数

 国内のパソコンネット検索は、96年にサービスを開始したヤフー日本法人が牽引(けんいん)し、グーグル日本法人が急追して2強を形成。これにMS日本法人が絡むが、いま転換点に来ている。

 「今後のネット利用はパソコンから携帯電話中心になる」。7日の決算発表でソフトバンクの孫正義社長はこう語った。

 日本では音楽配信やコミュニティーサイトなどの携帯での利用がパソコンを上回る勢いで進む。

 ヤフーとグーグルは、孫社長の言葉を裏付けるように、舞台を携帯電話へ移して競っている。

 グーグルは06年にKDDIと提携。携帯「au」のネットサービス「EZweb」のトップページに検索窓をつくり、簡単にネット検索を使えるようにした。さらにNTTドコモとも提携を発表。トップページの検索窓のほか、動画投稿サイト、ユーチューブも新機種で使えるようにした。

 ヤフーは親会社ソフトバンクと連携し検索サービスを展開。携帯の「Y!」マークのボタンから一発で検索画面に接続できる利便性を売りに、携帯ネット検索でもトップを握る構えだ。マイクロソフトは、検索やメールなどを利用できる携帯版「ウィンドウズ・ライブ」を07年に始めた。

 各社が携帯に力を入れるのは、拡大する携帯ネット広告市場を収益源にするためだ。電通総研は、06年に390億円だった携帯ネット向け広告費は11年に1284億円と3倍以上に伸びると予測する。

 各社は、入力したキーワードに対応した広告を検索結果とともに表示する「検索連動型」広告のモデルを、パソコンに続き携帯でも普及させたい考えだ。「世界の5年先を行く」(ネット検索エンジン企業首脳)とも言われる日本での成功は、今後の他地域での展開にもつながる。

 競争はネット検索にとどまらない。米グーグルが昨年、携帯向け基本ソフト(OS)開発構想を発表。米MSの本丸に挑むこの動きにドコモとKDDIが参加した。

 対するMSは、米国で普及するキーボードつき携帯電話スマートフォンを日本でも05年から発売し、存在感を示そうとしている。

 年内には、米アップルのiPhoneが日本で発売されるとも言われており、実現すれば、携帯ネット市場を巡る競争はさらに激しさを増す。

 ■ソフトバンク・孫社長「強い関心持って見守る」

 ヤフー日本法人の親会社で米ヤフーにも出資していることから注目を集めていたソフトバンクの孫社長は7日、「重要な転換点なので強い関心を持って見守る」と述べた。既に電話で米ヤフー側と連絡を取り、今後もアドバイスしていく意向という。

 孫社長と米MSのビル・ゲイツ会長は旧知の仲で、ヤフー日本法人の井上雅博社長はソフトバンク出身。3社の関係は良好といわれる。米ヤフーが日本法人株を手放すとの観測もあるが、その場合でもソフトバンクが筆頭株主に変わりはない。

 日本への影響が当面限定的とはいえ、買収提案は展開次第で日本のネット利用者の選択肢を狭めかねない問題になる。

 米MSはOSとネット閲覧ソフトの抱き合わせ販売で独占的地位を築いたと批判されてきた。家庭用ゲーム機「Xbox360」や新パソコン用OS「ウィンドウズ・ビスタ」などで日本事業に勢いが見られない米MSにとっては、ヤフー日本法人の高いブランド力は魅力的だ。

 関係者からは、MSが力を入れるセキュリティーソフトなどをヤフーのサービス基盤を使って販売するなどすれば、「独占的との批判が日本で高まる可能性がある」との見方がある。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/business/update/0208/TKY200802070421.html