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2008年02月07日(木) 02時31分

<暫定税率>延長求め全戸に「意見チラシ」配布 和歌山県毎日新聞

 今国会の焦点、道路特定財源の暫定税率を巡り、和歌山県が延長を求める「意見チラシ」を県内全約39万世帯に配り始めた。県は「廃止された場合の影響をきちんと知ってもらうため」と説明。しかし、継続を主張する政府・与党と廃止の野党が真っ向から対立している問題でもあり、学識者からは「作為的なものを感じる。専門的な知識がない人への脅しだ」との批判も出ている。

 チラシはA4判。全30市町村と県トラック協会などでつくる県道路協会が120万円で50万部を作成した。県や農漁業、商工関係など12団体連名で「地方のチャンスを奪わないで下さい!」と訴える。暫定税率が廃止されれば県、市町村は大きな減収となり、福祉・教育などのサービスが低下するなどと記す。

 県によると、県内の道路改良率(51.5%)、高速道路供用率(37%)はともに全国ワースト2位。暫定税率廃止で、県は約120億円の減収、市町村全体で約48億円の減収と試算している。

 協会事務局がある県道路政策課は「チラシを見た県民がどう判断するかは自由だ」などと妥当性を主張。海南市の神出政巳市長は「延長を前提に来年度予算を考えている。廃止されれば混乱することを知ってほしい」と説明し、和歌山市の大橋建一市長らも自ら街頭でチラシを配った。

 全戸に配るかどうかは市町村の判断としているが、反対はなく、広報紙などとともに配布されるケースが多い。

 協会の運営財源も加盟市町村の負担金などで賄われている。前鳥取県知事の片山善博・慶応大大学院教授は「納税者が行政のやるべきことを決めるのが本来のあり方。納税者の多くが、『今は(暫定税率を廃止して)ガソリン代を下げてもらう方がいい』と思うなら、道路はペースダウンするのが民主主義だ」と指摘。「04年に交付税を12%減らされた時の方が地方自治体にはよっぽどダメージが大きかったが、チラシ配布はしたのだろうか」と疑問視している。【久保聡】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080207-00000011-mai-pol