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2008年02月06日(水) 16時28分

中国製ギョーザ JTと日清、冷凍食品の統合解消毎日新聞

 日本たばこ産業(JT)と日清食品は6日、4月に予定していた冷凍食品事業の統合の基本契約を解消すると発表した。JT子会社のジェイティフーズが輸入販売する中国製冷凍ギョーザが原因の中毒事件の発生で、JTの冷凍食品事業の先行きが不透明になったことが要因。事件は、同社の経営戦略に大きな影響を及ぼすことになった。

 JTと日清は昨年11月、冷凍食品大手の加ト吉を共同で買収し、冷凍食品事業を加ト吉に集約する形で統合することで合意した。JTはすでに加ト吉株の93.88%を取得しており、100%子会社化した後に、同社株の49%を日清に譲渡する計画だった。

 しかし、1月30日に冷凍ギョーザ事件が発覚。原因究明などの対応に追われて統合の準備作業が進められないうえ、今後の冷凍食品事業に甚大な影響を受けるのは避けられない見通しだ。このため、5日にJT、日清、加ト吉の3社長が協議。日清は加ト吉への出資比率を当初計画の49%から過半数へ引き上げたいと提案したが、JTは受け入れず、統合を白紙に戻すことで合意した。

 JTは今後、加ト吉を100%子会社化し、冷凍食品事業の再生を目指す方針。JTの木村宏社長は同日午前、事件発覚後初めての記者会見に臨み、「心より深くおわび申し上げる」と陳謝した。自らの経営責任については「問題の早期解決を果たすことが今果たすべき役割」と述べ、現時点では辞任は考えていないことを明らかにした。

 一方、日清食品の安藤宏基社長も同日午前の会見で「(出資比率が50%未満の)中途半端な立場では責任がとれない」と統合解消に至った理由を説明した。【秋本裕子、工藤昭久】

 ◇初めて姿見せた木村JT社長

 「いつまで続くか分からず、先行きの見通しが立たなかったことが要因の一つ」。日本たばこ産業(JT)の木村宏社長は日清食品との統合解消を発表した6日の会見で、相次ぐ中国製冷凍ギョーザへの毒劇物混入を理由に挙げ、しょうすいしきった表情を見せた。

 事件発覚後5回目の記者会見で、初めて姿を見せた木村社長は冒頭、10分近くを事件の説明と陳謝に充てた。「当社の冷凍食品を召し上がったお客様に重大な健康被害を与えた。衷心よりおわびしたい」などと3度にわたり頭を下げた。

 さらに「もっと早い時期に危険性を認識していれば、被害の拡大を防げたとの指摘を真摯(しんし)に受け止めたい。もう少しやりようがあったのではないかと反省している」と視線を落とした。

 報道陣から「大変な時期なのに(統合解消という企業側の)『カネ計算』をしていたのか」と追及され、「責任をとったということだ」と語気を強めた。辞任については「今果たすべきは早期解決のため最大の努力を果たすこと」などと声のトーンをやや強め否定。被害者宅を訪れ、謝罪する意向を示した。

 また、中毒事件発覚の2日前にJT株が急落したことについて、木村社長は「問題の日付に(事件を)知っていた人間は限られている。インサイダー取引は考えづらい」と明言した。【奥山智己、吉井理記】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080206-00000016-maip-bus_all