記事登録
2008年02月06日(水) 09時09分

ヤフー、マイクロソフトの提案に「沈黙」 買収長期化も朝日新聞

 米マイクロソフト(MS)による米ヤフーへの買収提案をめぐる攻防は、長期化する可能性が出てきた。ヤフーは週明け4日も具体的な態度を表明せず、MSへの対抗策を含めた検討を本格化させているとの見方も広がる。ネット検索で世界最大手のグーグルがMSによる買収阻止の構えを見せ、対抗馬として複数の米大手企業の名も挙がる。決着の行方は予断を許さない状況だ。

●MS「借金辞さず」

 「これは事業規模(拡大)をめぐるゲームだ。ヤフーの経営陣と株主が我々との統合を早急に決めると信じている」

 MSのスティーブ・バルマー最高経営責任者(CEO)は4日の投資家向け説明会で、買収成立への意気込みを語った。買収提案を発表する直前のヤフーの株価に62%上乗せした破格の買収額446億ドルを確保するため、長年守ってきた「無借金経営」の方針を破り、「初めて借金をする」(MSのクリス・リデル最高財務責任者)との見通しも明かした。

 なりふり構わぬ必死の姿勢を見せるのは、買収交渉が長期化する可能性が漂い始めたことも背景にある。5日付の米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は、MSとヤフー双方で、対立の長期化を避けるために買収額を引き上げる動きが出てくる、との見通しを報じた。

 3日には、MSが標的に定めるグーグルが「MSのヤフー買収はやっかいな問題を引き起こす」などとする声明を出して強く反発。買収阻止に向けた協力をヤフーに申し出たと報じられていた。

●独立維持優先か

 今後の展開をめぐっては様々な観測が飛び交っている。

 もともとMSへの対抗心が強く、合併申し入れを再三断ってきたヤフーは「独立経営維持の可能性をまず検討する」(米アナリスト)との見方が多い。

 だが、従来通りの「単独生き残り路線」では、低迷する業績を急回復させてグーグルを追い上げるには力不足。提案拒否の場合に、敵対的な株式公開買い付け(TOB)の可能性をにじませるMSに対し、ヤフーは敵対的買収者を跳ね返すため、新株予約権を発行する「毒薬条項(ポイズンピル)」を持つが、「破格の買収額に好意的な株主の同意を得るのは難しい」(米アナリスト)との見方が多い。

 このため、MSに対抗できるだけの強力な大手企業との提携や合併、またはグーグルへのネット検索や広告事業の外部委託などが対抗策に挙げられている。提携相手には米ネット大手AOL、米ネット競売大手イーベイなどが浮上。「反MS」を旗印に有力企業がまとまれば、MS主導の交渉を覆す力になる可能性がある。ただ、巨額資金を投じるMSに対抗するには相当な覚悟が必要とみられる。

 ヤフー日本法人の扱いも焦点のひとつ。米ヤフーが独立経営維持のため日本法人の持ち株を現金化することも検討していると英紙フィナンシャル・タイムズは4日付で報じた。WSJも、日本法人の持ち株を過小評価しているというヤフー株主の見方を伝えている。

●ネット広告争い

 MSがヤフー買収に踏み出したのは、急拡大するネット広告市場を確実な収益源とするのが狙いだ。MSは、10年にはネット広告市場が約800億ドル規模となり、07年の約2倍に拡大すると予測している。

 市場の主役はグーグル。検索したキーワードに連動して広告を表示する「検索連動型広告」で先行した。同社の広告収入は07年10〜12月期決算でヤフーの3倍弱、MSの6倍弱に達した。

 売上高のほとんどを広告収入で得るグーグルは、検索サイト上で展開する大部分のサービスを無料で提供する事業モデルを確立した。MSの主力製品で有料の表計算ソフト「エクセル」やワープロソフト「ワード」とほぼ同じサービスも、無料提供。携帯電話に必要な基本ソフトなどにも参入し、無料公開でMSの「本丸」にも踏み込む。

 「ドル箱」が次々に無料化される一方で、広告市場でのグーグルとの差が広がっていくMSの危機感はヤフーや他の競合会社も共有しており、業界再編を促す原動力になる可能性がある。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/business/update/0206/TKY200802060003.html