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2008年02月06日(水) 23時34分

<未払い年金>一括支給で税取り過ぎ4万人 社保庁が放置毎日新聞

 社会保険庁は6日、年金の未支給が見つかった人に過去の未支給分を一括払いする際、本来は年単位の支給額に基づいて、各年ごとに源泉徴収額を計算すべきなのに、66年の源泉徴収開始以来、ずっと一括支給額で源泉徴収していたと発表した。仕組みの誤りに気づきながらも長年、放置していたという。03年4月以降に限っても、推計で最大約4万人は一括支給額で課税されていた。まとまった金額に課税されたために、大半の人は所得税を余分に払っていたとみられる。

 未支給の年金が見つかった人に対し、社保庁は「本来は支払い済みの金」という理由で、分割払いはせず、一括で支給している。

 社保庁は89年以降、各年ごとの源泉徴収額を再計算した「年別内訳書」を発行。受給者はそれに基づいて確定申告を行い、過払いの税金を取り戻せたが、課税額が高くなると気付いて要求してきた人にしか内訳書は発行していない。こうした仕組みがあることも受給者に告知しておらず、多くの人は一括支給額で課税されていたとみられる。

 社保庁は一括支給額への課税が間違いであると認識していたが、「税務署が適切な処理をしていると考えていた」「システム改修が必要」などの理由で放置していたという。

 今年1月に国税庁から指摘され、ようやく方針を転換した。8月までにシステムを改修し、対象者に各年ごとの正しい源泉徴収票を発行する。07年分の確定申告では、申し出があれば年別内訳書を出し、払い過ぎた税金は年金額に上乗せして還付する。ただ、債権の効力(5年)から、02年以前の過払い分をどう扱うかは未定という。

 03年4月〜07年12月までの間、未支給が見つかった受給者は約20万人。このうち複数年にわたって未支給分の支払いを受けた人が2割いたことから、課税額に誤りがあった人は最大で4万人と推計している。しかし「影響を受ける人の数や金額は調査中」と言う。

 政府は05年以降、65歳以上の人への課税を強化。50万円の老年者控除を廃止し、公的年金等控除を縮小した。このため05年以降に、それ以前の未支給分を一括支給された人は、税金を過払いしている可能性がより高い。【吉田啓志】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080206-00000157-mai-pol