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2008年02月05日(火) 00時00分

ヤフー買収劇 覇権争い三つのシナリオ読売新聞

 【ニューヨーク=池松洋】米マイクロソフト(MS)の米ヤフーへの買収提案に対抗し、ネット検索世界最大手の米グーグルがヤフーに「支援」を申し入れたことが報道され、ネット業界の大型買収劇はマイクロソフトとグーグルによる覇権争いに発展してきた。

 他のIT(情報技術)、メディア企業なども提携に関心を示しているとみられるヤフーがどう対応するか、世界の注目が集まる。

《1》MSの提案受け入れ

 ヤフーは企業風土の違いなどを理由にマイクロソフトからの提携交渉申し入れを拒み続けてきた。しかし、ヤフーは2006、07年と2年連続で減益となるなど業績が低迷しており、「ヤフー再生にはマイクロソフトの支援が必要」との指摘がある。

 さらに、ヤフー株の買い取り額として1月31日時点の株価に62%を上乗せしたマイクロソフトの提案はヤフー株主には魅力的だ。米メディアでは、「マイクロソフトの提案をヤフー経営陣がはねつけることは難しく、最終的には受け入れざるを得ない」との観測が広がりつつある。

 マイクロソフトの狙いは、伸び悩むポータル(玄関)サイトのMSNをヤフーと統合したり、ヤフーに技術支援をして新たなサービスを開発したりして、グーグルの対抗軸を形成することだ。ネット業界での「マイクロソフト対グーグル」の対決が鮮明となる。

 ただ、ヤフー社員の多くがマイクロソフトへの反発心から他のネット企業へ流出すれば、買収効果が十分に上がらない可能性がある。さらに、各国の司法当局が、両社の統合が独占禁止法に違反するとの判断を下す懸念も残る。

《2》グーグルと提携

 米ウォール・ストリート・ジャーナル紙(電子版)によると、グーグルのエリック・シュミット最高経営責任者(CEO)は1日、ヤフーのジェリー・ヤンCEOに「(マイクロソフトによる買収を阻止する)どんな支援も行う」と電話したという。グーグルのデビッド・ドラモンド上級副社長も3日の声明で「インターネットの開放性がグーグルとヤフーを生んだ」と述べ、ヤフーへの親近感を強調した。

 独禁法との絡みから、グーグルが直接買収に乗り出す可能性は低いとみられる。しかし、他の企業がマイクロソフトより高い買収額を提案する際に資金拠出するなどして、ヤフーを側面支援する選択肢は有力だ。

 同紙によると、両社は欧州でのネット広告事業で数週間前から提携交渉を進めているという。これが全面的な提携に発展すれば、ネット検索業界の1位と2位が巨大勢力を形成することになる。

 ただ、マイクロソフトは、買収提案が拒絶された場合に、ヤフーに対し、敵対的な株式公開買い付け(TOB)に踏み切る可能性が高い。

《3》他の大手と提携

 ヤフーの他の提携先として、米インターネットオークション最大手のイーベイや、米インターネット接続サービス最大手のアメリカ・オンライン(AOL)など複数の企業名が浮上している。いずれもマイクロソフトやグーグルと組む場合とは異なり、ヤフーが経営の独立性や独自性を維持しやすい組み合わせだ。

 その場合、ヤフーは自社の株主に対し、マイクロソフトの提案以上に株価を引き上げるための経営改善策を提示する必要がある。しかし、他のネット大手との提携で説得力のある対策を打ち出すのは容易ではない。

http://www.yomiuri.co.jp/net/feature/20080205nt02.htm