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2008年02月04日(月) 00時00分

マイクロソフト、米ヤフー買収提案で再び独禁法訴訟に直面か読売新聞

 Microsoftは、Yahooに対して446億ドルの買収提案をしたことによって、ここ10年近く経験していなかったような厳しい独禁法違反の審査を米連邦政府から受けることになるかもしれない。

 そもそも連邦政府がかかわってくる以前に、Yahooの株主や取締役がこの取引をどう考えるかを含め、克服するべき障害は多い。しかし、どのような審査が実施されるにしても厳しいものになることをうかがわせる兆候がすでに現れている。

 上院の反トラスト問題を扱う小委員会の委員長であるHerb Kohl上院議員(民主党、ウィスコンシン州選出)は米国時間2月1日、「提案されている取引が、これまで活力を維持してきたハイテク市場の競争状態にいかなる害悪も与えることなく、またインターネットユーザーのプライバシーの権利にも悪影響を与えないことを慎重に審査する必要がある」と声明で語った。「もしYahooがMicrosoftの提案を受諾したら、当小委員会は聴聞会を開いてこの取引が競争とプライバシーに与える影響を調査する予定である」(Kohl上院議員)

 Kohl上院議員は合併に決して好意的ではない。Kohl上院議員と同小委員会の筆頭委員であるOrrin Hatch上院議員(共和党、ユタ州選出)は、GoogleとDoubleClickの合併では強力な調査を要請した。また、Kohl上院議員は衛星ラジオサービスのXMとSiriusの合併を阻止するように司法省に要求した。さらに同上院議員はAT&TとBellSouthの合併にも条件をつけるように要求したことがある。

 加えて、リベラルなプライバシー擁護団体の一群がすでに司法省または連邦取引委員会(FTC)に対して合併の阻止、または少なくともプライバシー関連の譲歩を要求する準備を進めている(合併審査は司法省とFTCの両方が担当する)。

 GoogleのDoubleClick買収に反対したデジタル民主主義センター(CDD)のJeff Chester氏は「今回の合併は、競争全体やコンテンツの多様性に対する影響を含めて詳細に調査する必要があると思う」と述べている。さらに「市場全体、特にGoogle/DoubleClick連合と成立する可能性があるMicrosoft/Yahoo連合の目的と能力を十分に視野に入れた消費者のプライバシー保護が法制化されるまでは、今回の取引を一切前に進めて」欲しくないとも述べている。

 電子プライバシー情報センター(EPIC)事務局長のMarc Rotenberg氏は「競争や技術革新をめぐる懸念に加えて、今回提案されている合併がインターネットユーザーのプライバシーに及ぼす影響を考慮するべきである」と述べている。

 合併審査の基準には合併が競争の状況にどのような影響を与えるか、そして合併によって消費者の福祉が向上するのか悪影響を受けるのかといった点についての審査が含まれるが、これまで紹介した意見は従来の合併審査の基準を改めるように要求しているリベラルな権利擁護団体の取り組みを代表するものである。この新しいアプローチは、合併した企業による製品のプライバシーの観点から見た「品質」が低下する可能性があると主張するものである。

 一方、Microsoftは米国や欧州の独禁法をめぐって規制当局とは長い付き合いがある。こうした企業はAT&TやIBMなどを除けばほとんど存在しない。しかし、独禁法の裁判(1998年に始まり、裁判所監督の和解に至った)以来、ワシントン州やワシントン特別区との関係ははるかに良好になっている。

 Microsoftの幹部はもはや司法長官に対して悪口を言い放つこともなく、政府は「Microsoftの活力を鈍化させようとしている」とのBill Gates氏による非難声明もmicorsoft.comから姿を消している。現在ではMicrosoftは他のどのハイテク企業よりもはるかに多く金額をロビイストに費やしており、彼らを送り込んで長年のライバルであるGoogleを弱体化させる政治プロセスを駆使するための安定した政治的地盤を十分に確保している。

 ニューヨーク大学ロースクールのゼミでMicrosoftの独禁法違反の事例を教えている教授のHarry First氏は、現時点で可能性のあるMicrosoftによるYahoo買収を独禁法違反の事例として立件できるかどうかを「すぐに判断するのは難しい」と指摘する。しかし、最高経営責任者(CEO)のSteve Ballmer氏が、Googleに対抗することが、2つの企業の合併が必要な理由の1つであると事実上ほのめかしていたが、このような発言は勧められないとも述べる。

 「ナンバー1に対抗するためにナンバー2とナンバー3が合併しなければならないという議論は、一般に独禁法違反を回避するための論拠としては説得力がない」とFirst氏は言う(First氏はいずれの3社でも法律業務の経験はない)。「市場で集中度が高まるにつれて競争は少なくなる可能性がある。なぜなら3社(の競合会社)が2社になるからである」(First氏)(CNET Japan)

 「これらの2社を相手取って訴訟を起こす論拠となる潜在的な争点は数多く、原告となる可能性のある潜在的な当事者も欧州当局から連邦政府まで多数存在し、さらには米国各州も訴訟に関心を示す可能性がある」とFirst氏は指摘する。「もしMicrosoftがこうした訴訟をクリアしてしまったら、われわれは困った状況に陥るかもしれない」(First氏) 関連記事 MS、グーグルに米ヤフー買収で反論:「競争的な市場の創出」 - 2008/02/04 10:38:01 米ヤフー:「検討には時間がかかる」--MSの買収提案で - 2008/02/04 10:36:01 グーグル、マイクロソフトの米ヤフー買収を懸念 - 2008/02/04 09:36:01 マイクロソフト、米ヤフーに総額446億ドルの買収提案 - 2008/02/01 21:56:01 マイクロソフトの監視期間の延長要請にさらに多くの州が同調 - 2007/10/22 14:07:01 マイクロソフトと欧州当局の和解がソフトウェア業界に及ぼす影響は - 2007/10/26 20:18:01

http://www.yomiuri.co.jp/net/cnet/20080204nt15.htm