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2008年02月02日(土) 10時58分

<中国製ギョーザ>水際でのチェックの難しさ浮き彫り毎日新聞

 遠く中国で製造されたギョーザが日本の食卓に届き、中毒事件を引き起こした。薬物がどの過程で混入したかは不明だが、中国で混入したとすれば、両国の検疫をすり抜けたことになる。輸出振興のため優遇措置で検疫を免除した中国側。日本側は加工食品では農薬の有無は調べておらず、輸入食品の増加で検査も行き届かない。水際でのチェックの難しさが浮き彫りになった。【北京・浦松丈二、清水健二、堀智行】

●中国

 世界の工場・中国は、輸出品について検疫の厳格化を目指している。しかし、国家品質監督検査検疫総局は天洋食品(中国河北省)の冷凍ギョーザに対し、地元当局の品質検査に合格すれば、輸出時は書類審査だけで検疫が免除される優遇措置を与えていた。

 優遇措置は通関の迅速化による輸出振興を目的に03年7月に導入され、同10月に申請に基づいて全国1327社が初認定された。問題の冷凍ギョーザを製造した天洋食品はギョーザだけが認定されていた。

 同局の王大寧輸出入食品安全局長は1月31日の会見で、優遇措置について「輸出検査と通関スピードの上で優遇するもので、検査項目が減ることはない」と説明。「品質が安定している。04年8月に基準値を超える大腸菌が検出された以外は問題は起きていない」と述べ、天洋食品への優遇措置を正当化した。

●日本

 06年度の輸入食品は約186万件。10年前の1.6倍に上る。抜き打ちで残留農薬や成分をチェックするモニタリング検査の対象は約8万件で全体の5%にも満たない。ギョーザなど「その他の冷凍食品」の輸入は10年で4.3倍に。7割以上は中国製だ。違反件数は増えつつあるが、検査率は下がっている。

 厚生労働省は食品衛生監視員を増員しているが、06年に残留基準を設けた農薬を拡大したポジティブリスト制度を導入し、検査すべき農薬の種類が倍増。作業に時間がかかり「検査率はもはや上げられない状況」という。

 また輸入時、加工食品の大半は細菌や添加物のチェックだけで、農薬の有無は調べていない。そもそも加工食品には農薬の残留基準さえないのが実態だ。

 「総菜から残留農薬を検出することは非常に難しい」。横浜検疫所の中川研一食品監視課長(56)は頭を抱える。同検疫所には年間、全国の約1割に当たる20万件の輸入食品の届け出がある。07年度は6028件を職員13人で検査している。加工食品は調理過程で熱によって残留農薬が分解され、農薬検出自体が困難という。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080202-00000033-mai-soci