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2008年02月02日(土) 08時28分

食品・流通に業績不安 消費者離れ中国製全体に拡大 冷凍ギョーザ中毒事件フジサンケイ ビジネスアイ

 中国製冷凍ギョーザによる中毒事故を受け、食品や流通企業で業績不安が広がっている。問題商品の自主回収のための費用負担に加え、消費者の中国製食品離れが一段と加速し、売り上げが落ち込むのは避けられない。原材料費の高騰によるコスト負担も増大しており、「業績に深刻な打撃を受ける」(食品メーカー)との悲鳴が上がっている。

 ■2000億円超の減収も

 「今でも(消費者の)不信を買って非常に悪い状態にあるが、より落ち込むと思う」

 グループで冷凍食品事業を手がける日清食品の安藤宏基社長は1日の会見で、買い控えの広がりに強い懸念を示した。

 中毒事故の直撃を受けた国内冷凍食品市場は、出荷ベースで1兆円規模。各社とも、混乱が続いており、回収費用や販売への影響は見通せない状況だが、「長期化すれば市場全体で2000億円を超す減収になりかねない」(業界関係者)との見方も出てきた。

 冷食は前年比2〜3%の伸びが続く成長市場だが、昨年は食の安全性をめぐる問題が相次ぎ、上期はマイナスに転じた。この時は「業界全体で1000億円を超す影響が出た」(大手食品メーカー)という。今回は「健康被害が出ており、消費者がより慎重になる」(ニチレイ)ことから、影響度は比較にならないほど大きいとの見方が大勢だ。

 店頭で安売りの目玉となる冷食は“薄利多売”が常態化し、メーカーの実質的な利益率は1〜2%ともいわれており、「経営体力の弱い中小メーカーの淘汰(とうた)にもつながりかねない」(業界関係者)との危機感も広がっている。

 ■品質管理を再認識

 スーパーなど流通企業への影響も深刻だ。昨年夏、米国で中国産ウナギから使用禁止の抗菌剤が検出された際、一部の企業では3割近く売り上げが落ち込んだ。各社とも中国の養殖場と直接契約し加工から出荷まで一貫して管理する安全対策を徹底していたが、“風評被害”は避けられなかった。

 このため、各社とも、今回も問題商品だけでなく、中国製や冷凍食品全体に影響を広がることを懸念し、売り場での対応などを急いでいる。

 イトーヨーカ堂などを傘下に持つセブン&アイ・ホールディングスは仕入れや品質管理の担当社員を2日、中国に派遣することを決めた。取引がある農場や加工工場に出向き、品質管理態勢を再確認する。セブン&アイは「これまでも現地で品質を確認した上で仕入れているが、やるべきことはやっておきたい」としている。

 ジャスコなどを展開するイオンも1日までに、自主開発商品の製造を委託する工場16カ所に立ち入り検査を実施。品質管理や労働者の福利厚生などもチェックしたという。

 一方で、問題商品以外も店頭から撤去する動きが出ている。大手百貨店の大丸と松坂屋は1日までに、メーカーが自主回収を決めた商品以外の中国製冷凍商品に加え、中国産の野菜や果物も撤去。「お客さまの不安もあり、安全を第一に考えた」という。西武百貨店とそごうも中国で加工された野菜などで正式な証明がついていない場合は、使用しないことを決めた。

 食品スーパーの担当者は「たとえ安全でも、結果として売れなければ、中国産は置けない」とため息をもらす。

 相次ぐ食品値上げで、生活防衛意識による買い控えが顕在化するなか、影響が拡大し長期化すれば、個人消費全体が冷え込む懸念もある。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080202-00000003-fsi-bus_all