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2008年02月02日(土) 03時01分

JT株、ギョーザ事件公表2日前に急落…証取委が調査読売新聞

 中国製の冷凍ギョーザを食べた人に中毒症状が相次いでいる問題で、輸入元・ジェイティフーズ(JTF、東京都品川区)が商品の自主回収を公表する2日前、親会社の日本たばこ産業(JT)株の売り注文が殺到し、株価が急落していたことがわかった。

 JTでは当時、千葉県と兵庫県で計5人が中毒になったとの連絡を受け、対策を検討しており、この過程で内部情報が漏れた可能性もある。証券取引等監視委員会ではインサイダー取引がなかったかどうか調査を始めた。

 JT株が急落したのは先月28日。終値で比較すると直前の取引日(25日)の61万円から56万2000円まで1割近くも下がり、売買が成立した出来高も昨年5月25日以来、最も多い5万2602株だった。

 食品の販売を手がけるJTFはJTの100%子会社で、商品の事故情報はJT品質管理部にも通報が入る仕組みになっている。

 JTによると、問題の冷凍ギョーザの販売元・日本生活協同組合連合会(生協)側から「12月28日に『CO・OP手作り餃子(ギョーザ)』を食べた千葉市の親子2人が体調不良を訴え、治療を受けた」との連絡が入ったのは1月4日。3日後の7日には品川区から、兵庫県高砂市で「中華deごちそう ひとくち餃子」を食べた一家3人が入院したことを伝えられたという。

 JTは29日になって、千葉県市川市で22日に起きた3件目の中毒について、千葉県警から事情聴取の要請を受けたことから、食品事業本部で対応を検討。29日夜に自主回収の方針を決め、翌30日に公表した。

 JTでは、28日までの社内状況について、「殺虫剤が原因という認識はなく、中毒があったことを知っていたのも担当部署の数十人程度だったはず」と説明している。しかし、年明けに1件目の中毒発生を把握した後、細菌検査の結果を生協に報告したり、兵庫県に調査状況を問い合わせたりするなどしており、この過程で、取引先なども含めて情報が広がった可能性がある。

 一方、JTの株価は年明け以降下落傾向で、16日に2万円、22日にも2万9000円下がった。JT株はもともと値動きが小さく、04年以降は緩やかに上昇を続けていたが、自主回収を公表する30日までの1月の下落率は東証株価指数(TOPIX)の6・5%に対し12・5%。目立ったマイナス材料がない中での値下がりは、市場関係者の間でも不審を呼んでいた。

 JTのIR広報部は、「株価は投資家の判断に委ねるしかないが、不正取引があったとは考えていない」と話している。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080202-OYT1T00050.htm?from=top