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2008年02月02日(土) 00時00分

マイクロソフトのヤフー買収提案 グーグルへの対抗狙う読売新聞

 ソフトウエア最大手の米マイクロソフトが、インターネットポータル(玄関)サイト最大手の米ヤフーに買収を提案したのは、ネット検索市場で独走するグーグルに単独で対抗するのは困難と判断したからだ。

 グーグルはネット広告市場で圧倒的な地位を固めているだけでなく、ソフトウエアや携帯電話事業への進出も加速させ、マイクロソフト、ヤフー共通の大きな脅威となっている。買収が実現すれば、IT(情報技術)産業にも大きな影響が出そうだ。(ニューヨーク・池松洋)

三顧の礼

 マイクロソフトは1日の声明で「ネット広告市場は非常に速いペースで成長しているが、1人のプレーヤーに独占されている。マイクロソフトとヤフーは、顧客に信用できる選択肢を提供できる」と強調し、ヤフーへの買収提案が、グーグルに対抗するためであることを明確に打ち出した。

 マイクロソフトは、ヤフーとのネット事業統合によるスケールメリット(規模の利益)や、研究開発投資の効率化など、「相乗効果で少なくとも年約10億ドルのコスト削減効果がある」と試算している。

 ヤフーには2006年後半と07年初頭にも合併の可能性を含む提携交渉を申し入れたが、ヤフー側に拒否されていた。

 それでも、「三顧の礼」に踏み切ったのは、グーグルが、一段と大きな脅威となってきたからだ。

強まる競合関係

 マイクロソフトの足元の業績は好調だ。2007年10〜12月期決算は、主力の基本ソフト(OS)「ウィンドウズ・ビスタ」や応用ソフト「オフィス」の貢献で売上高が同期の過去最高を記録した。

 しかし、ネット事業は、中核のポータルサイト「MSN」の利用者が伸び悩み、広告収入に直結するネット検索の利用者はグーグルの約6分の1に過ぎない。

 ネット事業の強化を図ってきたものの、世界最大の動画投稿サイト「ユーチューブ」やネット広告会社のダブルクリックなどの大型買収案件は、グーグルに取られてしまった。

 しかも、グーグルは07年からマイクロソフト「オフィス」と互換性のある応用ソフトの無料配布を始め、「本丸」への攻勢を開始した。マイクロソフトが強化している携帯電話向け事業でも、グーグルは07年11月に携帯電話会社と提携して無料でソフトを提供する方針を打ち出すなど、競合関係が強まっていた。

 このグーグルに対抗するには、ネット業界の老舗であるヤフーのブランドとサービスを活用するのが最適と判断したようだ。

逆風下のヤフー

 一方、シリコンバレーのベンチャー企業から成長したヤフーは、ジェリー・ヤン最高経営責任者(CEO)ら経営陣がマイクロソフトに対して強い警戒心を抱いているとされ、過去2回の提携交渉が不調に終わったのも、このためと見られている。

 しかし、今のヤフーは経営の悪化が鮮明だ。07年12月期の純利益は2年連続の減益となり、ヤンCEOも「08年も逆風は続く」と認めざるを得なかった。今回はマイクロソフトの提案を受け入れる可能性もある。

国内競争激化も

 国内のインターネット検索業界では、利用者数でヤフーがグーグルを2倍以上引き離して業界トップにある。日本のヤフーへの出資比率はソフトバンク(41・1%)が米ヤフー(33・4%)を上回っており、米ヤフーの発言力も限られる。このため、「米ヤフーの株主構成が変わっても、国内への影響はあまりないだろう」(関係者)との見方が多い。

 しかし、ヤフーは、米ヤフーから検索や広告配信技術を取り入れており、検索サーバーも米国内に置く。マイクロソフトによる買収が決まり、米ヤフーの経営戦略が大きく変化すれば、日本のヤフーへの支配を強める可能性もある。

 グーグルは、NTTドコモやKDDIとの提携を相次いで発表するなど、携帯電話を通じたネット検索に力を入れており、今後、国内でも「2強」の争いが激しさを増しそうだ。

http://www.yomiuri.co.jp/net/feature/20080204nt06.htm