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2008年02月02日(土) 15時26分

学校裏サイト、先生の「闘い」 教研集会で事例報告朝日新聞

 中高生が情報交換を目的にインターネット上につくる「学校裏サイト」。匿名で書き込めるため誹謗(ひぼう)中傷の場にもなりやすい。福岡県内のある市立中学校でも見つかったが、その時、教師たちはどうしたのか。3年生の学年主任の教諭(44)が、2日午後から東京都内で始まる日本教職員組合(日教組)の教育研究集会の分科会で経緯を報告する。題して「学校裏サイトとの闘い」。

  

 「部員たちの雰囲気がおかしい」

 昨年6月1日、金曜日の朝。3年生の学年主任は、バスケットボール部の顧問から報告を受けた。ある生徒が「匿名のメールで悪口を送りつけた」とうわさされ、練習に来なくなったという。

 その夜。メールではなく、携帯電話の掲示板の書き込みが原因とわかった。学校裏サイトだ。

 翌2日朝。主任は、バスケ部の顧問が生徒から聞き出したアドレスから裏サイトを開いた。

 「○○(生徒の実名)体くさい」「あいつ死んだほうがいいよ 女子でいじめよう」「キモイ顔面しやがって」

 自分のクラスの生徒の実名も挙げられていた。「新聞やテレビで見るだけだった裏サイトを目の当たりにして、がくぜんとした」

 後に分かったことだが、3年生の3分の2が裏サイトの存在を知っていた。「知らないのは教師ばかりだった」

 誰が自分の悪口を書いたのか。疑心暗鬼で、友だちにも心を開けなくなっている子がいるのではないか。そう考えた主任は月曜日の4日、3年生の担任らで学年部会を開いた。

 翌日、全クラスで道徳の授業を行い、裏サイトについて考えさせた。各クラスの担任は裏サイトの内容を黒板いっぱいに書き出した。書き込みの多さと内容の醜さ、ひどさに気づかせるためだ。書き込みが原因で殺人事件が起きたり、悪口を書かれた人が自殺したり、最悪の場合は死につながることも教えた。

 主任は、その日の「帰りの会」(学年集会)でも訴えた。「名前が出ないからと人を傷つければ、書き込むごとに自分の心がカサカサになる」「嫌な書き込みをしたことがある人は今夜削除してほしい」

 同時に、掲示板の管理人に誹謗中傷の書き込みの削除を要請した。ネット上に掲示板の場所を提供していたプロバイダーには、掲示板の閉鎖を依頼した。

 6月20日。授業参観後の父母らとの懇談会で書き込みの抜粋を示し、裏サイトで傷ついている生徒がいる現実を知らせた。「ひどい」。顔をしかめる親もいた。

 プロバイダーが対応したのか、その後、掲示板は閲覧できなくなった。

 その後。3年生のあるクラスに新しい掲示板ができた。欠席したり早退したりした生徒のために、次の日の授業で準備が必要なことなどを書き込む場だ。生徒たちが自ら大事に運営し、「楽しい掲示板」になっているという。

 主任は反省を込めて語る。「教師は裏サイトのことを知らなさすぎる。もっと勉強しなければ。誹謗中傷があれば、削除や掲示板の閉鎖が必ずできる仕組みも必要だ」

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http://www.asahi.com/national/update/0202/TKY200802020162.html