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2008年02月01日(金) 18時27分

ネット心中直前で“引き返した”男性(4)──最期の場所を決定、目前で詳細が揺れるオーマイニュース

 2007年12月14日朝。待ち合わせ場所の新宿駅西口地下交番前で、「決行日が曖昧な以上、一緒には行けない」と都内在住の男性が去ってしまった。

 残る50代会社員のO氏、住所不定の「田中」(44)、大阪の女性(22)の3人はレンタカーで出発した。ただ、このときO氏は、「レンタカーはあくまで移動の手段であり、その車内で決行することは考えていない」と初心通り主張した。そのため、練炭を燃やす場所は「テント内」ということに決まった。

 3人は食事をしながら、決行場所を考えることにした。運悪く、レンタカーのカーナビゲーション・システムが故障していた。そこで「土地勘のある場所で」ということになった。

 大阪の女性は東京方面には思い入れの土地がない。そのため、O氏と「田中」が候補を考えていった。そして「山」「静か」「できれば雪の中で」……などと頭に浮かべながら、2人の共通項だった長野県の諏訪・茅野方面を「最期の場所」に決めた。

 「私も『田中』さんも諏訪や茅野に土地勘があったんです。大学生のころ、私の家の別荘が白樺湖にあったんです。『田中』さんも会社員時代にこの地方に赴任したことがあったと言っていました。それに、『田中』さんの先輩の別荘が茅野にあるんです」

 出発前に、都内周辺のホームセンターでテントと練炭を購入し、睡眠薬をさらに調達することにした。「田中」と女性が2人で車に乗ってホームセンターに行き、O氏は近くの開業医を訪ねた。このとき、「田中」と女性がなかなか帰ってこなかったため、O氏は不安になったという。

 「私の携帯電話が壊れていたんです。そのため2人と連絡が取れませんでした。カーナビも壊れていたし、私を見つけられるのか不安でした。結局、無事落ち合えたのですが、話を聞いてみると、ホームセンターでは木炭しかなく、練炭を売っている場所を探していたそうです。やっと燃料店を探し当て、練炭を購入した。けれども、自殺志願者と悟られないようにいろいろ世間話をしていたら、店主と話が弾んでしまい、なかなか店を出られなかった、ということでした」

 決行に必要な「テント」「練炭」「睡眠薬」は入手できた。この日の夜、3人は横浜のホテルに泊まり、決心を確かめ合った。キャンプ経験のある「田中」の部屋に集まって、テント組み立ての予行演習もした。O氏は決心を揺らがないよう、壊れていた携帯電話を捨てた。

 翌12月15日、長野に向かった。中央高速などは混んでおらず、午前10時には白樺湖に到着した。テントを張っても発見されない場所を探そうとしていた矢先、女性がレンタカーのハッチバック部分に手を挟まれ、けがをした。そのため下山し、治療のために茅野の病院に行った。女性が病院にいる間、O氏はレンタカーの茅野営業所に向かい、カーナビの不調を理由に四輪駆動車に変えた。

 「そのときまでスタッドレス(タイヤ)を履いていたものの、FF(前輪駆動車)だった。四駆になったことで、雪の中でも行けるようになったんです」

 3人は再び白樺湖に戻り、具体的な決行場所を探した。ただ、「見つかってしまうのではないか」との不安から、なかなか決まらなかった。すると「田中」と女性が、

 「レンタカーでもいいんじゃないか」

と提案してきた。しかし、O氏は断固拒否した。キャンプ場で決行しようとの案も出たが、3人の服装が不自然なため怪しまれると思い、断念した。蓼科温泉の近くにあったバンガロー案も出たが、迷惑をかける人を増やしたくない、との理由でO氏は首を縦に振らなかった。

 「このとき思ったんです、『楽に死のう』と考えるのではなく、やっぱり、私は首つりがいいんだ、と」

 夕食時、O氏はこの思いを2人に伝えた。このため「3人一緒にテントで練炭自殺」という当初計画を変更し、「田中」と女性が2人でテントで練炭自殺、そのテント近くでO氏が首つり自殺──に計画を変更した。

 この夜、3人は隣の市の上諏訪温泉に泊まった。

(つづく)

(記者:渋井 哲也)

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