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2008年02月01日(金) 09時59分

JT、規模拡大の矢先 中国離れ懸念 ギョーザ薬物中毒朝日新聞

 どこまで影響が広がるのか——。中国製冷凍ギョーザによる中毒で、冷凍食品大手、加ト吉を買収して、冷食事業の規模を拡大したばかりの日本たばこ産業(JT)は大きな痛手を受けそうだ。消費者の「中国離れ」が進むことも懸念される。生産拠点を中国に頼る冷食業界全体に、不安感が漂いはじめた。

冷凍食品の国別輸入量

 問題の中国製ギョーザを販売したジェイティフーズの親会社JTは、冷食を事業の柱にするため、1月に冷食大手の加ト吉を買収した。4月には自社と日清食品の冷食事業を加ト吉に集約して、「日本最大級の冷食メーカー」を誕生させる手はずを整えていた。3社の冷食事業を合わせると売上高は約2600億円。「食品業界再編の核となる」(木村宏社長)と意気込んでいた矢先の失態だった。

 JTの冷食の売上高は約500億円で、うち2割は中国製品とみられる。大手スーパーの西友やサミットなどの製品撤去はJTグループの冷食全般に及んでいる。こうした動きが長引けば、業績に深刻な影響を与えかねない。失った信頼の回復には、さらに長い時間がかかるのは確実だ。

 しかもJTの冷食の海外生産拠点は、ほぼ中国に集中している。今回の事態をうけ、JTは「タイやベトナムにも移す方向で議論がはじまる」(JT首脳)という。リスク回避のための拠点の分散だが、コストアップは避けられない。

 どこまで影響が広がるのか。他の冷食メーカーも戦々恐々だ。

 「これは食べても大丈夫なのか?」

 冷食大手、ニチロの相談窓口には消費者の問い合わせが31日朝から殺到。日中は電話とメールを合わせると700件近くにのぼった。ほかのメーカーも消費者への対応や自社製品の品質確認に追われ、混乱が続いた。

 各社が最も恐れるのは、消費者による「中国忌避」の広がりだ。

 冷食分野は、食品事業で数少ない成長分野だ。手軽さがうけ、近年も消費は増加傾向にあった。

 住友信託銀行調査部の秦野敏行主任調査役による分析では、冷食(冷凍調理食品)の1世帯当たり平均購入額は06年で5195円。87年の約2.2倍だ。この伸びを支えたのが中国製品だった。

 業界からは「中国から生産を移すのは、非現実的だ」(日本冷凍食品協会の木村均専務理事)との声が強い。だが、消費者の中国への不信感が高まったり、検査充実でコストが急増したりすれば、「国内回帰」の可能性も出てくる。冷食業界の寡占化に拍車がかかる可能性がある。 アサヒ・コムトップへ

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