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2008年02月01日(金) 22時28分

日中両政府、主席訪日控え関係悪化懸念 毒入りギョーザ朝日新聞

 中国製の冷凍ギョーザによる薬物中毒事件は、中国の胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席の今春の訪日を控え、「春が来た」(温家宝(ウェン・チアパオ)首相)と評された日中関係の危うさを浮き彫りにした。対応次第では国民感情が衝突する事態にもなりかねず、両政府とも慎重なかじ取りを迫られている。

 「原因が分かってから対応することが必要だ」

 事件の一報が伝えられた1月30日、記者団に答える福田首相の歯切れは悪かった。政府高官も「中国が『風評被害だ』と反発する可能性もある。慌ててはいけない」。様子見の背景には日中関係に悪影響を及ぼしてはいけないとの懸念がにじんでいる。

 こうした懸念は中国側も同じだ。胡主席の訪日準備のため、今月末から来月にかけて唐家セン(王へんに旋)国務委員、楊潔チ(竹かんむりに褫のつくり)外相が来日。胡主席の訪日は国家主席として10年ぶりとなる。

 「日本の消費者、とりわけ中毒になった消費者の体を気にしている。早い回復を希望する」

 中国外務省の劉建超報道局長は同31日の会見で、言葉をかみしめるように話した。国民のまなざしが厳しい対日関係で、「報道局長がこれほど低姿勢なのは初めてだろう」(外交筋)という声が出るほどだ。

 中国外交の特色は、大国らしく決然さを強調する点だが、巨体だけに動き出すまで時間がかかる。05年の反日デモの対応にも時間がかかった。

 それが一転、今回は素早く対応した。食品の品質管理を担当する国家品質監督検査検疫総局が直ちに東京の中国大使館を通じて声明を発表。同時に公安当局も捜査を開始するなど異例ずくめだ。

 これらの中国側の対応について、町村官房長官は1日の会見で「中国も国を挙げて取り組んでいると理解している。相当な問題意識で取り組んでいる」と評価した。

 だが、両国間には東シナ海のガス田の共同開発問題や歴史問題など、国民感情を刺激しかねない敏感な課題がほかにもある。食品は国民の生命にかかわる問題だけに、とりわけ神経質にならざるを得ない。

 高村外相も1日の会見で「食の安全は国民の関心が非常に高く、場合によっては悪い影響が出てくるかもしれない」と指摘した。ただ「両国政府がきちんとした対応をとることで悪い影響は最小限に抑えられるのではないか」とも付け加え、日中が新たに規定した「戦略的互恵関係」の観点から冷静な対応をとるべきだとの考えを示した。

 中国産食品についてはこれまでも残留農薬問題などの安全問題が浮上していた。両国は食の安全でも協力を進め、昨年12月末に訪中した福田首相は温首相との首脳会談で、残留農薬や検査技術に関する研修を実施したいと表明。日本側は1月中旬、事前調査のため専門家を派遣するなど軌道に乗りつつある。

 福田首相も1日、記者団に対し「中国政府もすでに重要視して対応している。十分に政府間同士の話し合いができる体制だ」と強調し、両国の連携による原因究明に自信を見せた。 アサヒ・コムトップへ

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