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2008年02月01日(金) 11時00分

中国製ギョーザ中毒:県内で12人被害届 影響拡大、給食の献立変更も /静岡毎日新聞

 ◇「何を信じていいのか」
 中国製冷凍ギョーザによる中毒事件で、県によると県内では12人(31日午後5時現在)が健康被害を届け出た。スーパーからの製品撤去や学校給食の献立変更など、影響が拡大している。便利さから日ごろよく使う冷凍食品で起きた事件だけに、「何を信じて食べればいいのかわからない」との不安が消費者に広まっている。
 県が31日午後5時現在でまとめたところ、県内6保健所に12人が健康被害を届け出た。重症者はいない。
 御殿場市の女性(42)と娘(15)は1月23日の夕食に、市内のスーパーで買ったジェイティフーズの「手包みひとくち餃子」を5個ずつ食べ、翌24日朝から吐き気などの症状を訴えた。女性は医療機関を受診したが、食中毒とは断定されなかった。症状は回復したが報道を見て31日朝に御殿場保健所に届け出た。県は残ったギョーザ10個を検査し、原因などを特定する方針。
 このほかにも昨年12月上旬から1月下旬にかけて同社の「手包みひとくち餃子」や「CO・OP手作り餃子」を食べた県東部や西部の6人が食中毒に似た症状を訴えた。また、富士保健所管内では29日に同社の「豚肉のごぼう巻き」を食べた女性が体調を崩した。さらに熱海、西部両保健所管内と静岡市内では3人が冷凍ギョーザやレンコンのはさみ揚げを食べて下痢などを起こしたが、中国製品かどうかは不明。
 一方、県教育委員会は31日、中国製冷凍ギョーザを給食に使っているかどうか調査を始めた。
 三島市では小学校1校で同日の給食で出す予定だった国産ギョーザを、保護者などの不安に配慮してシューマイに変更。「県学校給食会」は県内10市町19校でジェイティフーズの国産ギョーザの納入を中止した。静岡市教委も各給食センターなどに献立からギョーザを外すよう求めた。
 中国製品全般を避ける動きもある。藤枝市教委は、2月の給食から「中国産の食材は使わない」との方針を決めた。富士市教委も、冷凍のキヌサヤやグリーンピースなどを調べ、中国製品であれば使わないようにする。
 ◇スーパーでは続々撤去
 県内のスーパーではジェイティフーズの冷凍食品などを店頭から撤去。購入者から安全性や返品などの問い合わせが相次ぎ、対応に追われた。
 コープしずおか本部(静岡市葵区)などには30日から31日にかけ、問い合わせや苦情が約500件あった。問題の商品は販売しなかったが、中国の同じ工場で製造された「CO・OP本場中国肉餃子」を06年11月から昨年9月まで、共同購入などで販売した。県内の購入者約1万1000人にはがきで通知し、残っていれば回収する。
 静鉄ストア(同市葵区)では該当商品の販売はなかったが、30日夕にジェイティフーズの冷凍食品17品目を、県内25店舗の売り場から自主撤去した。
 遠鉄ストア(浜松市中区)は11店で該当商品を販売していたため、30日に撤去。同社には「買った中国産の枝豆は平気か」などの電話などが20件あった。
 5店で該当商品を販売していたスーパー「主婦の店」(同)の斎藤寿宏管理部長は「消費者の不信感のしわ寄せはいつも現場の小売店に来る」とメーカーへの不満を示した。
 静岡市葵区のスーパーに買い物に来ていた同区の主婦、樋口あや子さん(60)は「他にも似た商品があるので、どれが安心して買えるのかわからない」と不安そう。また別のスーパーにいた浜松市中区和合町の大学3年、黒木渉さん(20)は「中国産は怪しいと思いつつも、1人暮らしに冷凍食品は必需品。これからも買う」と複雑な表情を見せた。
 ◇被害母子購入先、回収の注意書き
 ●御殿場
 吐き気などの症状を訴えた御殿場市内の母子が、ジェイティフーズの中国産「手包みひとくち餃子」を買ったとされる同市内のスーパーでは31日、冷凍食品コーナーに「当店でも(問題の商品を)販売しており、決して召し上がらず当店までお持ちください」などの注意書きを掲示した。
 ただ、同スーパーは毎日新聞の取材に対し、母子の症状と商品の因果関係が明確でないとして、店名の公表は拒否。「現時点では店頭での注意喚起で客の対応は十分」との考えを示した。
 ◇「なぜこんなこと起きたのか」
 ●食品商社
 冷凍ギョーザを製造した中国の天洋食品から、「煮沸牛肉」を輸入していた食品商社「東海澱粉」(静岡市葵区)は31日、「晴天の霹靂(へきれき)で、なぜこんなことが起きたのか分からない」と話した。
 同社が輸入していたのは牛肉を蒸気で加熱した「スチームビーフ」。06年1〜11月と07年1〜11月、三重県の食品メーカー向けに、約110トン輸入した。厚生労働省の検査や社内での自主検査で問題はなかったという。
 07年11月に商品内に異物が混入していると、納品先から指摘があり、天洋食品との取引を中止していた。同社総務課は「人の命を脅かすほどの農薬が入っていたとは、何か事故が起きたとしか考えられない」と話している。
 ◇きょう予定のイベントを中止
 ●JT静岡支店
 日本たばこ産業(JT)静岡支店は、今回の事件に子会社が関係したことを受け、1日から3日まで予定していたイベントを、急きょ中止することを決めた。
 イベントは、県内で6月から導入される、たばこ購入の成人識別ICカード「taspo(タスポ)」のキャンペーン。カードの申請受け付けが1日から始まるのに合わせ、JR静岡駅で申込書の書き方のアドバイスなどをする予定だった。カードの申請受け付け自体は予定通り1日から始まる。

2月1日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080201-00000001-mailo-l22