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2008年02月01日(金) 00時00分

問題の中国工場視察者「衛生意識、高いと感じたが…」朝日新聞

 「品質は厳しく管理されていたはずなのに」——。冷凍ギョーザへの農薬混入が明らかになった中国・河北省の「天洋食品」の製品を輸入していた商社関係者らが31日、朝日新聞の取材に工場内の様子や製造ラインについて証言した。有名企業との取引実績や衛生管理の徹底ぶりに、「信じて疑わなかった」と声を落とす。農薬はどのような経路で紛れ込んだのだろうか。

天洋食品工場内部の作業風景。従業員が肉に串を通す作業をしている=取引先企業提供

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 輸入企業の関係者によると、天洋食品は91年に設立され、約6万8千平方メートルの敷地に約6千平方メートルの工場がある。この企業が天洋から受け取った資料には、正社員約130人、パート・アルバイト844人がいると記載されていたという。

 「日本への輸出企業として有名で、大企業も多く取引しているのが大きかった」。大阪府高槻市の商社「イメックス」の畑中艶子社長は、天洋食品と取引を始めた経緯をこう説明する。

 畑中社長は1月、農薬成分「メタミドホス」が混入した疑いがある河北省の工場を視察した。工場に入る前、作業着を着せられたうえに消毒液をかけられ、髪の毛とツメの長さまでチェックされた。日本語の通訳もつけられた。工場内では製品の温度管理が徹底されていた。ただ、情報を管理するためか、他社の製造ラインは見せてもらえなかったという。

 「従業員の衛生意識は高いと感じた。これまでに天洋の製品に関するクレームもなかったので、信用していた」。畑中社長は落胆する。

 約15年前からおでんに入れる牛すじ串などを輸入する大阪市の「インターグローバル」。昨年10月に工場を視察した同社の長谷川清社長(68)によると、工場内部に入る扉は二重で、通路には消毒液が張られていた。作業員は100度の熱湯で煮沸されたすじ肉を台の上に置き、手作業で串に刺していたという。

 その後、すじ肉は高温の蒸気で殺菌、瞬間冷凍された。長谷川社長は「衛生面はしっかりしていた」と振り返る。

 1月に牛すじを輸入したばかりの別の商社関係者は「加工食品は農薬検査はしない。どこまで検査するべきなのか」。天洋と10年以上取引をする大阪市の「日佳食品」の伴卓馬社長は「農薬は包装資材の倉庫など他の場所で混入したのかもしれない」と推測する。

 天洋食品製の冷凍カツを取り扱っていた「江崎グリコ」(大阪市)は05年12月、品質保証部の担当者ら2人を工場に派遣。工場内では(1)鉛筆など混入の恐れのある物の持ち込み禁止(2)従業員の手洗い励行——など、異物混入を防ぐ取り組みも充実していた。江崎グリコ広報IR部は「工程を事細かに説明してくれるなど対応も熱心だった」と言う。

 03年から、ある日本企業の紹介で天洋食品を知った冷凍食品大手「加ト吉」は、「天洋がHACCP(米国発祥の衛生管理手法)や国際標準化機構(ISO)の認証を取得していたことが取引を始める要因になった」と説明する。

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200801310087.html