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2008年02月01日(金) 06時37分

中国製餃子 「食の安全」守る体制の強化を(2月1日付・読売社説)読売新聞

 中国からの輸入食品に対する不安が広がっている。産地や賞味期限を偽った話とは、次元の違う出来事だ。

 千葉、兵庫両県をはじめ各地で、中国・河北省の工場で作られた餃子(ギョーザ)を食べて、下痢や嘔吐(おうと)の症状を訴える事例が相次いでいる。餃子と包装パッケージから、多量の農薬「メタミドホス」が検出された。

 被害がどこまで広がっているのか。まず、全容の解明を急がねばならない。

 これまでも、中国製輸入食品から基準値を超える農薬が見つかったことはあった。しかし今回は、食べて重体となった子どもまでいる。致死量に近いほどの薬物が混入していたようだ。

 日本でメタミドホスの製造・使用・輸入は禁止されていること、冷凍餃子のパッケージに破損がないこと、などを考え合わせると、中国での製造過程で混入した可能性が高い。

 中国の食品監視当局は、「事態を重視し、調査結果を公表する」との声明を出した。言葉通り、徹底した原因究明に取り組んでもらいたい。

 問題の工場に発注した輸入元企業も、原因調査にあたるべきだろう。日本の消費者に対して、納得できる説明と再発防止策を示す責任がある。

 被害の発生から公表まで、時間がかかりすぎている点も不安だ。

 今回の被害は、まず昨年12月28日に千葉市で起こった。次いで今年1月5日に兵庫県高砂市で、さらに22日に千葉県市川市で発生している。各地の警察や保健所などがそれぞれに把握し、調査してはいたが、同じ工場製の冷凍食品が原因と判明したのは30日になってからだ。

 千葉市と高砂市のケースで、同じ冷凍餃子の問題と察知できていれば、市川市の事例など他の被害は防ぐことができたのではないか。関係当局の動きを検証して、連携を強化すべきだ。

 輸入時の検疫体制も十分ではない。厚生労働省は輸入食品の1割程度をサンプル調査しているものの、農薬に関しては生鮮品を中心に行われている。検査手法の見直しが必要だろう。

 中国では、国内の各地でも、残留農薬などによる大規模な食品中毒が頻発している。中国全体が「食の安全」をあまりにも軽視しているのではないか。その姿勢が改まらない限り、根本的な解決にはならない。

 昨年末に開かれた日中ハイレベル経済対話で両国は、「食品安全での協力」で合意した。中国に対しては、厳しく事態の改善を求めると同時に、食品管理の向上を支援する取り組みも必要だ。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080131-OYT1T00815.htm