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2008年01月31日(木) 00時00分

顔面蒼白、全身しびれて動かず 冷凍ギョーザ食べた家族朝日新聞

 被害者となった高砂市の自営業男性(51)の妻(47)と、高校生の次男(18)の2人が30日夕、朝日新聞の取材に応じた。妻は「家族がみんな助かってほっとしている。本当に怖かった」と涙を浮かべ、次男も「まだ信じられない気持ち」と当時の体験を語った。

 2人によると、今月5日午後6時半ごろ、自宅で冷凍ギョーザを冷凍庫から取り出し、フライパンで熱して調理した後、3人で食卓を囲んだ。商品は昨年12月中旬、同県加古川市の「イトーヨーカドー加古川店」で、中国製とは知らずに妻と次男が購入。同月下旬、次男が5個ほど調理して食べたが、その時は異常はなかった。3人で食べたのは、残りの15個ほどだったという。

 最初に食べた妻は、強い苦みが口の中に広がり、ツンと鼻に抜けるようなにおいに驚いた。のみ込むことができず、すぐに吐き出した。次男も苦みを感じたが、パッケージの裏を見ると「ハーブにんにくを使っています」と書かれていたため、「こんなものなのかな」と思い、10個以上食べた。男性が食べたのは2、3個だったという。

 間もなく次男が「めまいがする」と訴え、横になった。続いて激しい吐き気をもよおし、スーパーの袋にもどしたが、その後も顔が真っ白になり、両目の焦点が合っていなかったという。やがて体がしびれて手足も動かせなくなった。

 男性が119番通報し、次男は数分後に高砂市民病院に搬送された。救急車に同乗した妻が「わかる?」と呼びかけても、「あー」とうめくだけで意識がもうろうとした状態だった。この直後、男性と妻も吐き気に襲われ、嘔吐(おうと)と涙、鼻水が止まらなくなった。3人はそのまま入院し、胃洗浄の処置を受けた。

 最も多くギョーザを食べた次男の症状は深刻だった。搬送直後、医師から「血圧も腎臓も肝臓も数値が異常だ。こんな症状は経験がなく、原因も不明。このまま意識が戻らない可能性もある」と告げられた。

 翌6日、次男は意識を取り戻した。解毒作用のある薬の点滴などを受け、症状は次第に治まっていった。次男が15日に、妻は17日に退院。男性も間もなく自宅に戻った。

 次男は「呼吸もまともにできないし、自分はどうなってしまうんだろうと不安で苦しかった。農薬が入っていても目に見えないし、食べる側としては防ぎようがない」と憤る。

 退院して以来、家族は食料品を購入する際に製造元を必ず確認するようになった。妻は「中国製はもう絶対に食べたくない。食の安全はお金に換えられない、とつくづく感じた。国を挙げて輸入食品をきちんと検査する態勢を整えてほしい」と訴えた。

http://www.asahi.com/kansai/sumai/news/OSK200801300080.html