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2008年01月31日(木) 08時01分

五輪控え「安全」に冷水 中国政府、管理体制なお不十分産経新聞

 【北京=野口東秀】中国産ギョーザ中毒事件は、国家の威信をかける北京五輪を8月に控え、「安全な食の国」のアピールに躍起な中国に冷水を浴びせた。世界各地で中国製食品・医薬品にからむ死傷者やトラブルが相次いだことを受け、中国政府は信頼回復に努めてきたが、当局の検査をすり抜けるケースや当局の指示に従わない企業などが後を絶たず、安全管理体制は依然不十分だ。

 中国製食品などをめぐっては昨年3月、米国で中国産の原料を使ったペットフードで犬や猫が大量に死亡。同年7月には、日本向け食品でウナギのかば焼きや煮ホタテの串焼き、カニの冷凍食品などから大腸菌や二酸化硫黄の残留物などが検出され、中国当局は輸出禁止などの措置を講じた。パナマで販売されたせき止め薬には中国製の有毒原料が含まれ、服用した約100人が死亡した事件なども発生し、信用は失墜した。

 北京五輪を控え相次ぐ事件に危機感を募らせた中国政府は、胡錦濤国家主席が食の安全問題について「中国は責任ある態度をとり品質と安全を守る」と強調。全国的な食品安全キャンペーンなどを実施し、粗悪な食品を摘発、問題のある企業の営業許可を取り消すなどの対策を講じた。また、監査・検査方法を厳格化するなどの改善措置もとった。

 今回の事件で検出された農薬「メタミドホス」についても中国当局は一昨年12月、2007年1月以降の国内での販売・使用を禁止していた。問題のギョーザは同年10月に製造されており、この指示が生産現場で守られていなかった可能性がある。今後の調査では、なぜどのように農薬が混入したかが焦点だ。

 しかしなぜ、政府が目指す「安全な食の国」が実現しないのか。摘発や指示がすべての現場段階で守られず、一部企業が利益だけを追求し、道徳が欠如していることが大きな要因だといえる。中国製食品の信用失墜は中国経済にとり長期的なリスクになるのは間違いない。 

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