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2008年01月30日(水) 23時11分

「最初の被害」から1カ月、公表遅れる ギョーザ中毒朝日新聞

 中国製冷凍ギョーザによる毒物中毒は、最初の被害とみられる昨年末の千葉市の事例から30日に公表されるまで、ひと月余りもかかった。輸入元のジェイティフーズを所管する東京都に兵庫県から一報が入ってからも23日経過。行政機関が事態を見極められない間に、被害は広がった。

 兵庫県には今月6日午前11時ごろ、病院に運ばれた同県高砂市の親子3人が毒物中毒症状を起こしているとの一報が入ったが、公表は見送った。県担当者は「国内で誰かが混入したという、事件性が高い事案と判断し、捜査を優先させるべきだと考えた」と説明する。

 同県から都に連絡があったのは、7日午前9時ごろ。ジェイティフーズの本社が品川区にあるため、調査を依頼された。

 区が同社に聞き取りをしたところ、健康被害の報告は他に入っていないことが判明。都は(1)製品自体の問題だと断定できない(2)農薬系中毒は故意に誰かが毒物を入れるケースが多い(3)家庭内の事件なら公表には人権上の問題もある——として、公表を見送ったという。

 29日午後6時ごろ、千葉県から都に「市川市の一家5人が有機リン系中毒とみられる症状を訴えた」との連絡があり、都は30日になって、同社に立ち入り調査を実施した。

 都福祉保健局は「ジェイティフーズと中毒との関連を明確にできず、公表すべき案件と考えなかった」としながらも、「結果論だが、7日時点で徹底的に調べていれば、市川のケースは防げたかもしれない」。

 一方、捜査当局も連携をとるまで時間がかかった。

 千葉県警が殺人未遂容疑で捜査を始めたのは今月23日。市川の一家が病院に運ばれた翌日、病院から通報があった。一家が食べたギョーザからメタミドホスが検出されたとする鑑定結果を得たのは29日だった。

 高砂市の親子が入院した翌日に通報を受けた兵庫県警が同様の鑑定結果を得たのも29日。両県警がメタミドホスの特性などを調べるため、それぞれ、同じ化学薬品工場に問い合わせたことから、両県の事件がつながった。

 両県警から報告を受けた警察庁が、被害の拡散を防ぐために急きょ公表に踏み切った。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0130/TKY200801300379.html