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2008年01月30日(水) 20時12分

毒ギョーザ 流通・食品業界、対応追われる産経新聞

 中国産冷凍ギョーザから毒性の農薬が検出され、10人に健康被害が出た食中毒事件。食品メーカーや流通業界は中国の現地工場と日本向け食品の品質管理基準を取り決め、製造過程についても厳しい指導を行ってきただけに大きな衝撃を受け、対応に追われた。
 消費者の矢面に立たされる流通各社の対応はす早かった。関東の食品スーパー、サミットは該当商品2品に加え、JTブランド全冷凍食品の売り場からの撤去を決めた。
 セブン&アイ・ホールディングスでは、傘下のイトーヨーカ堂111店舗で該当商品を販売していた。同社広報センターは「信じられないことだ。お客様の安全安心を考えると絶対食べないようにしてもらうことを願うしかない」と話す。
 ジャスコやマックスバリュなどを展開するイオンは全店で緊急調査を実施。該当商品は販売していなかったが、JTが自主回収を決めた同じ工場の商品の調査も急ぐ。
 大手ブランドが製造・販売した商品で起きた食中毒事件への衝撃は大きい。大手スーパーなどは新商品を扱う際、メーカーや卸業者に品質証明の提出や工場への立ち入り検査を行って入念に安全確認する。スーパーの担当者は「今回も調査は行っていたはず。途中で混入したとなれば、頻繁に工場の立ち入り調査をしないと防げない」と戸惑いを隠せない。
 昨年、中国産ウナギや野菜の安全性が問題になった時も流通各社は自主開発商品の生産体制の再チェックなども行っていただけに、「今回の食中毒でお客様の不信感に追い打ちをかける」(大手スーパー)と懸念する。
 一方、食品業界の反応は複雑だ。
 食品大手の味の素は30日夕、子会社である味の素冷凍食品に、問題を起こした天洋食品との取引の有無を含め大急ぎで安全確認調査を命じた。突然の報道に、同社広報室は「情報収集をしているところ」と困惑気味だ。また、即席めんの具材を中国から調達している日清食品は、「上海と滋賀の食品安全研究所で農薬のチェックをしている」と安全性を強調した。
 ただ、「残留農薬でここまで重篤な症状が出るのか疑問」(大手メーカー)との声も聞かれる。そこには食品・外食業界に、中国産食材なしに成り立たないほど深く浸透している現実がある。
 このため、「中国産品に“安かろう悪かろう”のイメージが強まるかもしれないが、日本向け食材の大量・安定供給を支える上で中国産の依存度は高い」(外食産業)と苦悩がにじむ。また、ある食品大手は「中国産の日本向け食品は基準が厳しくなった。今回の件は安全管理体制に取引先の商社など外部任せの姿勢があったのかも」と被害の拡大など成り行きに注目している。

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