記事登録
2008年01月29日(火) 08時00分

日弁連会長選 司法制度改革に影響も 法曹人口拡大、大きな争点に産経新聞

 2年に1度の日本弁護士連合会(日弁連)の次期会長選が例年になく注目されている。平成22年までに司法試験合格者を年間3000人に増やす政府目標に対し、各地の弁護士会から異論が相次ぎ、選挙の大きな争点となっているからだ。法曹人口拡大は司法制度改革の柱の1つで、選挙の結果次第では司法制度改革に影響を及ぼす可能性もある。(森本昌彦)

 会長選に出馬しているのは、大阪弁護士会所属の宮崎誠氏(63)と東京弁護士会所属の高山俊吉氏(67)の2人。裁判員制度などの司法制度改革の是非が主な争点で、元日弁連副会長の宮崎氏は司法制度改革推進、5回連続の立候補となる高山氏は裁判員制度など司法制度改革に反対の立場を取る。

 近年の会長選も司法制度改革を争点に行われ、推進派の候補が圧勝するという構図だった。しかし、昨年ごろから法曹人口に対する弁護士の関心が高まり、選挙戦の構図が変化。ある弁護士は「法律家の質と量の問題がこれだけの争点になったのは初めて。今回は日弁連がやってきた司法制度改革が、建前ではなく本音で問われる戦いだ」と指摘する。

 司法試験合格者増加に伴う弁護士の急増を受け、新人弁護士の就職難や質の低下、弁護士間の過当競争がささやかれ、昨年秋には、中国地方と中部地方の弁護士会のブロック大会で、司法試験合格者数削減を求める議題が相次いで採択。こうした情勢を受け、各候補も法曹人口についての政策に力を入れている。

 司法制度改革には賛成の宮崎氏も法曹人口問題については「日弁連の執行部が努力しているのに就職状況は厳しい。増員のスピードダウンが必要ではないか」と現在の合格者急増を懸念。以前から法曹人口拡大に反対してきた高山氏は「3000人になる前から、パニック状態になっている。増員政策が間違いであることをはっきりさせることが重要だ」と抜本的な見直しを主張する。

 2月8日の投開票を経て、同月15日の選挙管理委員会で正式に決まる次期会長。現在の日弁連執行部は政府方針を尊重する立場を取っているが、いずれの候補が当選しても、日弁連で法曹人口をめぐる議論が加速することは間違いなさそうだ。

                   ◇

【用語解説】「3000人」問題

 司法制度改革審議会の報告を基に政府が平成14年3月、「平成22年ころには司法試験の合格者数を年間3000人程度とすることを目指す」とした内容を含む司法制度改革推進計画を閣議決定。19年には2099人にまで合格者が増加したが、急増に伴って法律家の質や弁護士の就職難などの問題が指摘されている。法務省も3月に省内に組織を設け、見直しを検討していくことを決めている。


【関連記事】
“ガラス張り”の取り調べで不信感払拭を
司法試験合格者数について省内に検討組織
【野菊】裁判員制度で報道はどうなる?
裁判員制度あと1年 刑事裁判はこうなる(上)
裁判員制度あと1年 刑事裁判はこうなる(下)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080129-00000093-san-pol