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2008年01月28日(月) 03時00分

訪問看護、駐禁に泣く 容体急変でも規制除外されず朝日新聞

 自宅で療養する末期がん患者などを支える訪問看護ステーションの車が、訪問先で駐車違反とされるケースが相次いでいる。06年6月に導入された民間の駐車監視員制度などの取り締まり強化が背景にあるとみられる。現場の看護師からは「現状では違反覚悟で行くしかない」との声も上がっており、全国訪問看護事業協会が実態調査に乗り出した。近く、結果を公表する方針だ。

 「親が危険な状態の時に『駐車場がないから行けない』と言われて納得する人がいるのか」

 千葉県松戸市の訪問看護師(52)は、今も憤りが収まらない。駐車監視員が導入された06年の11月、駐車違反で反則金1万5000円を支払った。

 末期がん患者の状態が悪化していると連絡を受け、すぐ自宅に駆けつけた。1時間ほど様子をみて車に戻ると、違反の紙が張られていた。警察署で事情を説明しても取り合ってもらえなかった。

 千葉県訪問看護ステーション連絡協議会は昨年11月、県内165の事業所を対象に、訪問看護中の駐車違反について調べた。回答があった100事業所のうち11事業所が反則金を支払っていた。

 「意識がない」と家族からの連絡で駆けつけて違反をとられたケースもあった。駐車場所を探していて「家族から『まだですか、まだですか』と催促を受け、焦った」(千葉県柏市、54歳の看護師)という声もある。

 東京都看護協会も「深刻な社会問題」と頭を抱える。自転車で訪問できる家でも夜間や介助用具を運ぶ際には車が要るが、駐車場がある住宅地は少ないという。

 看護師がコインパーキングの費用を自分で払ったり、事業所が電動自転車の導入を検討したりしているケースもあり、負担も問題になっている。許可証を警察に事前申請して認められれば駐車禁止区域でも駐車できるが、審査に時間がかかるため、緊急時には対応できないのが実情だ。

 駐車規制の除外対象は都道府県が規則で定めている。千葉県は人命救助や消防活動など「不特定の場所を対象に公共性や緊急性が高い場合」としているが、訪問看護は除外されないという。

 県警は「(訪問看護は)契約した患者の所に行くもので、不特定の場所を対象としていない。もともと病気の人の所に駆けつけるのは緊急とも言えない」とし、除外対象に当たらないと説明する。駐車監視員側は「公平公正な立場で取り締まるのが我々の仕事。除外車両でない場合は、訪問看護も国会議員の車もみな同じ」(業務委託を受けている都内の警備会社)との立場だ。

 全国訪問看護事業協会の常務理事と日本看護協会の常任理事を務める井伊久美子さんは「カテーテルなど患者の状態を維持するものにトラブルがあれば緊急的な対応が必要になる。対応しないと亡くなる可能性もある」と、理解を訴えている。 アサヒ・コムトップへ

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