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2008年01月27日(日) 07時06分

多摩に公設法律事務所 新制度対応で初 弁護士不足補う東京新聞

 来年から始まる裁判員制度に対応するため、東京弁護士会は三月、東京都立川市に「公設」の弁護士事務所「多摩パブリック法律事務所」をオープンする。多摩地区では事件数が多く、弁護士不足が深刻。「このままでは裁判員裁判に対応できない」との危機感が設立につながった。

 弁護士会が開設費や運営費を支援して設立する「公設事務所」は、都内では六カ所目。都市型公設事務所は全国に九カ所あるが、裁判員制度への対応を主目的とする事務所は初めてという。

 全国約二万五千人の弁護士のうち約半数の一万二千人が東京に集中するが、ほとんどが二十三区の事務所に在籍。都の人口の約三分の一の約四百七万人が暮らす多摩地区(二十六市三町一村)に事務所を構えて活動する弁護士の実数は三百六十五人にとどまる。「地方のゼロワン地域(弁護士がいないか、一人だけ)の過疎問題が注目される中、多摩は中途半端に都会なのが災いして問題視されてこなかった」と新事務所の一員となる松原拓郎弁護士は話す。

 一方、多摩地区の事件を扱う東京地裁八王子支部の刑事事件数は全国七位(二千六百四件、二〇〇三年統計)の多さ。東京、大阪、名古屋、横浜、千葉、さいたまの各地裁に次ぎ、支部としては全国トップだ。

 初公判前に争点を絞り込む公判前整理手続きが義務づけられ、短期集中型の裁判準備が求められるなど、裁判員制度は弁護側に負担が大きいとされ、「小規模な個人事務所が裁判員裁判で大きな事件を担当するのは採算上も無理。誰も引き受けなくなる可能性がある」(松原弁護士)との危機感が高まっていた。

 新たな事務所では、刑事事件の経験豊富な弁護士五人が活動。裁判員制度開始後は、弁護活動の中心を担う予定。松原弁護士は「裁判員裁判の情報やノウハウを集積して弁護士同士が共有し、裁判員裁判でよりよい弁護活動ができるようにしたい」と話す。

 <公設事務所> 弁護士がいない地方につくる過疎地型と、過疎地派遣の弁護士育成や重大な刑事事件弁護の充実、弁護側が採算のとれない民事訴訟の支援など公益目的につくられる都市型−の二種類に分かれる。都市型公設事務所は大阪や札幌など全国に9カ所。東京都内には、東京パブリック(東京弁護士会)、渋谷シビック(第一東京弁護士会)、東京フロンティア基金(第二東京弁護士会)など5カ所がある。

(東京新聞)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008012790070640.html