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2008年01月26日(土) 01時42分

株式会社大学 きちんと教育をしているのか(1月26日付・読売社説)読売新聞

 多数の学生が本人かどうか確認できない。こうした大学が果たして大学の名に値するのか。文部科学省が改善を指導したのも当然だろう。

 指導を受けたのは、全授業をインターネットで行う初の4年制大学をうたったサイバー大学(福岡市)だ。

 大学設置基準では、授業を履修した学生に単位を与えることになっている。本人確認できない学生が多いサイバー大は、単位認定の基準を満たしていない疑いがあるためだ。620人とされる学生のうち、今週初めの時点で3割、現在も1割の学生を確認できていない。

 文科省は、早急に全員を確認するよう求めている。学校教育法に基づく改善勧告も視野に入れているという。

 同大は、ソフトバンクの子会社が、昨年4月に開校した株式会社立大学だ。IT総合学部と世界遺産学部がある。

 文科省は大学として認可した際、11項目の留意すべき事項を示した。ネットで授業を受ける学生の「替え玉」を防ぐため、対面式のオリエンテーションで学生本人を確認することもその一つだ。それがいまだに果たされていないのだから、大学側の責任は重い。

 学校教育法では、大学の設置主体を国、自治体、学校法人に限定している。規制緩和の一環で、構造改革特区法によって、自治体が国に申請して認められた特区では、株式会社でも大学を設置できることになった。

 経営悪化などで大学の運営に支障が出そうな場合には、自治体が学生の転学をあっせんするなどの責任を持つ。

 現在、株式会社立の大学は6校ある。資格試験予備校が作ったLEC東京リーガルマインド大は昨年、大学と予備校の授業が混然一体になっているとして、改善勧告を受けた。文科省は今回、サイバー大以外の4校にも、教授会の規則がないなどの留意事項を指摘した。

 大学には、質の高い教育・研究を行い、人材を養成する役割がある。しかし、株式会社立大学に対する文科省の数々の指摘を見ると、大学にふさわしい実態を伴っているとは言い難い。

 規制緩和は、新しい大学の参入によって競争を促し、教育の質を高めるのが狙いだった。認可基準を緩める代わりに、認可後のチェックを厳しくした。

 だが、株式会社立大学の現状から判断すると、しっかりした事前チェックは欠かせまい。多くの問題点を把握しているのに、それでも大学として認可することが妥当かどうか、再検討すべきだ。

 株式会社立大学の場合は、自治体の責任も重い。いま一度、点検が必要だ。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080126-OYT1T00073.htm