記事登録
2008年01月26日(土) 10時11分

ニセ学位、国立大医学部教授も 昇進時、経歴に採用朝日新聞

 国立大学医学部の教授らが昇進や採用の際、米国で学位として認定されていない「博士号」や「修士号」を経歴として使っていたことが25日、わかった。真正な学位と紛らわしい呼称をめぐっては、文部科学省が昨年12月、「高等教育に対する信頼低下につながりかねない」として注意を払うよう全大学に通知している。

 欧米には研究などの実態がないのに大学を名乗って学位を売る機関があり、「ディプロマ・ミル」(学位工場)と呼ばれる。今回明らかになった学位は、いずれも米国の評価機関が大学と認定していないニューポート大から得た人間行動学の博士号と修士号だった。

 金沢大医学部保健学科で理学療法を教える男性教授は、02年にニューポート大の博士号を取得した。03年、この学位も記載した書類で選考に臨み、助教授から教授に昇進した。

 金沢大によると、教授選考では、(1)業績(2)博士の学位がある(3)教育の経験がある——の3条件を総合的に判断する。男性教授の場合、選考過程で「ニューポート大とは何だ」と話題になったが、業績が優れているため昇進が認められたという。

 男性教授によると、ニューポート大からのダイレクトメールをきっかけに、約3年間にA4判3枚ほどのリポート約50本と博士論文を同大日本校に日本語で提出し、博士号を取得した。費用は230万円ほど。当時、非認定校とは知らなかったという。25日現在、大学のホームページ(HP)の経歴欄にニューポート大の学位を載せている。

 男性教授は「日本校なので日本語の論文でも変だとは思わなかった。大学で教えるには学生に対する指導力が必要。そのために勉強して博士号を取りたかった」と話す。

 金沢大医学部保健学科の女性准教授(看護学)は97年にニューポート大の修士号を取得して経歴に載せ、99年に講師から昇進した。今年1月、大学のHPから該当部分を削った。准教授は「働きながら学べるのでニューポート大を選んだ。勉強しなくても得られる学位と誤解されるのが不快で削除した」と説明する。

 金沢大はこの2人について、昇進は業績が優れていたからだとして、処分などは考えていないという。しかし今後は非認定校の学位が経歴にある場合は判断材料にすると説明する。

 三重大医学部看護学科は、98年にニューポート大の修士号を取得した私立短大の女性助教授を04年に教授に採用した。02年に国内の別の大学でも修士号を取得していた。06年に三重大を辞め、別の私立短大に移った。

 この教授は今年1月、独立行政法人科学技術振興機構がネット上で公表している経歴からニューポート大の修士号を削除した。教授は「お話しすることはない」。三重大によると、採用時にこの学位は書類にあったが、「選考過程において考慮していない」という。

 文科省が昨年末に公表した全大学・短大を対象にした調査では、44大学の教員49人の非認定学位が、採用・昇進の際に経歴に記載されていた。大分大工学部は昨年10月、非認定学位を経歴に使用した准教授の採用を取り消した。

 同省の担当者は「真正でない大学の学位を経歴として使っているのは問題だ。採用の際は大学側は意識を持って調査してほしい」と話している。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0125/NGY200801250006.html