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2008年01月26日(土) 17時10分

盗電71円、書類送検 大阪・松原署 窃盗容疑で棟続きの37歳男 産経新聞

 ■障害者宅にコード接続

 大阪府松原市の身体障害者の女性(65)宅から電気が盗まれた事件で、棟続きの長屋の2軒隣に住む会社員の男(37)が窃盗容疑で松原署に書類送検されていたことが26日、わかった。男は女性宅の屋外コンセントに延長コードを接続し、自室に電気を引き込んで約3年間生活。同署は被害総額を5万1800円と算定したが、接続状況を確認できた2日分の電気使用量約71円を立件対象とした。

 男は「電気を止められ、生活に困っていた。障害者の家なら簡単にはばれないだろうと思った」と供述し、容疑を認めているという。同署は被害者感情などを考慮し、厳重注意だけで刑事手続きを終える「微罪処分」を見送り、書類送検に踏み切った。

 調べでは、男は電力会社との契約がないのに昨年9月4日から6日にかけて約33時間、自宅の蛍光灯やエアコンをつけるなどし、女性宅から約2・17キロワット(約71円相当)の電気を盗んだ疑い。

 料金滞納で電気を止められた当初、男は自宅の配電盤を違法に改造し、電気を盗んで生活していたが、数カ月後に電力会社の調査で不法行為が発覚。その後、2軒隣に住む女性が障害者だったことから「(女性宅の)屋外コンセントを使えば簡単にはばれないと思った」という。

 女性は脳内出血の後遺症で左半身がしびれ、月額約15万円の生活保護などで生活。1人暮らしで電気代は月平均3000〜4000円だったが、男の自宅の電気メーターが取り外された平成17年4月以降に使用量が急増したという。

 昨年9月、男の自宅でエアコンの室外機が動いているのを近所の人が発見。松原署員が女性宅の屋外にある給湯器用コンセントに差し込まれた約5メートルの延長コードをたどると、男の自宅に行き当たり、事件が発覚した。

 刑法の窃盗罪は「財物」を窃取する罪で、電気は同法245条で“無形”の財物とみなされている。

 井戸田侃・立命館大名誉教授(刑事法)の話 「電気窃盗事件はたまにあるが、身体障害者宅を意図的に狙ったという今回のような犯行は聞いたことがない。立件した被害額はわずかだが、被害者が障害者であり、それを利用したのであれば犯行形態はより悪質だ。検察庁が余罪も含めて立件すれば、被疑者が起訴される公算は大きいだろう」

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 ■「弱みつけ込まれた」被害女性怒り

 「弱みにつけ込まれたようで悔しい」。隣人の男の盗電被害にあった女性は26日、産経新聞の取材に応じ、書類送検されたことへの安堵(あんど)感や今も収まらない怒りなど複雑な心境を語った。

 男が書類送検されたことについて「警察は懸命に捜査してくれたし、厳しい姿勢で臨んでくれたのはうれしい」と話したが、事件後も精神的なショックで体調を崩したことなどを振り返り、「弱者を食い物にされたようで許せない」と怒りをあらわにした。男は事件後、一度だけ謝罪に訪れたが、被害弁済はいまだにないという。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080126-00000101-san-soci