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2008年01月25日(金) 00時00分

カヌー部元顧問不正受給読売新聞

カヌー協会も「適正」 体協監査見抜けず

 海洋高校カヌー部の元顧問の男性実習助手(47)が領収書を偽造し、架空の合宿名目で県の補助金約140万円を不正受給していた問題。県体協の監査では報告書に記載された架空の合宿や偽造領収書などは発覚しなかった。また、同高の調査に対し、県カヌー協会は「適正処理」と回答していた。

 報告書には同じ期間に、2か所で合宿が行われていたという矛盾のある記載もあった。2003年5月31日〜6月2日に埼玉県内の旅館に泊まって合宿しているという記述がある一方で、同年5月30日〜6月1日にひたちなか市内の旅館に泊まって合宿したという内容だったが、県体協は「当時の担当者が見逃してしまった。基本的に顧問やカヌー協会を信用しており、領収書の真偽までチェックしていなかった」という。

 同高によると、以前にも元顧問が「合宿にいっていない」といううわさが立ったため、元顧問に聞き取り調査をしたが、認めなかった。県カヌー協会にも問い合わせたが、協会側からは昨年6月、「01年度から05年度までの強化事業費について報告書、領収書を監査の結果、適正に処理されていたことを認めます」という回答が文書であったという。

 元顧問が偽造した領収書を見た埼玉県内の旅館経営者は「うちのは旅館名が印刷で、偽造領収書は手書き。印鑑の名前も違う。こんなことがあるなんて」と驚く。以前、この旅館は実際に合宿に使われていた。

 元顧問は本紙の取材に「悪いとは思っていたが、自分の出費には限界があった。私の悪い例を参考にして、もっと指導者にやりやすい環境を作ってもらいたい」と肩を落とす。県教委の聞き取りに対し、使途として、部員の飲食費や移動のガソリン代、高速代、生徒のタクシー移動代などを挙げたという。

 元顧問は昨年12月に退職願を提出したが、県教委は保留扱いとし、今月23日から元顧問に事情を聴いている。私的流用がなかったかなどを調べているが、補助金使用先の領収書などもほとんどなく、記憶に頼る部分が大きいため、調査は難航も予想される。同部は過去、国体に何度も出場している。

 元顧問との一問一答は次の通り。

 ——補助金は何に使ったのか。

 すべて、部のために使った。スポーツ飲料など飲食代が多かった。合宿をやるかわりに、年間の練習を通じた強化費と受け止めていた。私的な流用は一切ないし、やましいことはしていない。

 ——どうして領収書の偽造をしていたのか。

 悪いこととはわかっており、良心の呵責(かしゃく)を感じながら偽造していた。しかし、こうしなければとてもお金が足りない状況だった。

 ——なぜそこまでする必要があったのか。

 生徒から部費の徴収もしておらず、部の運営上、資金が苦しかった。ポケットマネーから出費を強いられ、それにも限界があった。県からも実績を上げるよう重圧を受ける中、顧問は一生懸命やればやるほど、身銭を切らなければならなくなるというつらさがある。顧問はみんな同じ悩みを抱えていると思う。

 ——領収書の偽造はどうやって思いついたのか。

 前任者も似たようなことをしていたし、カヌー協会の担当者とも偽造のことは相談していた。独断でやっていたわけではない。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/ibaraki/news/20080124-OYT8T00874.htm