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2008年01月25日(金) 11時29分

「病気でしょ…60年以上生きて」裁判官が痴漢被告に説諭産経新聞

 人間たるもの、年を取ったら、それ相応の分別を持つものと思っていた。しかし、刑事裁判を傍聴していると、齢を重ねることで自分をコントロールする力まで衰えてしまったのか、と思うような事件もある。

 東京地裁で24日開かれた、電車内で痴漢をした男性被告(64)の初公判も、その一つだった。

 被告は平成19年11年17日夕、JR日暮里駅から常磐線に乗車し、混雑した車内で、少女(17)の尻を触わったとして、東京都迷惑防止条例違反の罪に問われた。罪状認否で被告は「間違いございません」と容疑を認めた。

 検察側の冒頭陳述によると、被告は帰宅するため常磐線に乗車。車内は混雑しており、右斜め前に立っていた少女の右ふとももを、電車の揺れに合わせて、右手の甲と指で触った。5分間耐えていた少女が意を決して右手をつかむと、被告は「カバンが当たっただけ」と言い逃れようとした。だが、少女が南千住駅で被告を駅員に突き出そうとすると、被告は足を踏ん張り、下車を拒んだ。少女は乗客と力を合わせて被告を降ろし、駅員に引き渡した。



 弁護人「逮捕されて接見に行ったとき、痴漢した理由を何と言った?」

 被告「会社帰りに行きつけの居酒屋で酒を飲んで、日暮里から常磐線に乗った。かなり混んでいて、目の前に少女がいて、持っているカバンの手のところに相手の尻があったから、その状態で触っていた。大きな抵抗がなかったのでそのままでいた」

 弁護人は、少女が感じた苦痛を被告に考えさせようと質問する。
 弁護人「痴漢をしているとき、少女はどう考えていると思った?」

 被告「酒でボーッとしていて、少女の気持ちまで察する余裕がなかった」

 弁護人「最初の接見で『この程度なら嫌がっていないので許してくれているのではないか』と言っていたの覚えてる?」
 
被告「抵抗がなかったので。甘い考えでした」

 少女が抵抗しなければ、ずっと触り続けるつもりだったのかもしれない。

 「今後同じことを繰り返さないために何をすればいいと思うか」と弁護人に問われた被告は、こう述べた。「電車に乗るとき、始発から乗って座れるようにする。仕事をクビになったので新たに仕事を探すが、電車通勤しないで済む近場を探す」


 こうした被告の言動を、裁判官は強い口調で非難した。

 裁判官「あなたは平成17年に2度、迷惑防止条例違反で起訴されて、罰金30万円と50万円の判決を受けてますね。50万円の方は支払えず、労役場に行っている。その間、何を考えていたんですか?」

 被告「気持ちでは反省していたが…」

 裁判官「病気でしょ?」

 被告「自制心が弱かった」

 裁判官「こんなに繰り返すのはどこかおかしいんでしょ。今、この法廷にいる人たちは、あなたよりはるかに若い。その人に諭されて、どういう気持ちがしますか?」

 被告「情けないです」

 裁判官「60年以上生きてきて、晩年汚してどうするつもり? 3件とも60越えての事件ですよ。(痴漢が)少しくらいなら許されるなんて、あるわけないでしょ。思慮分別のない未成年の子供じゃないんだよ。60歳超えた人間がそんなこと言っていいの? 悪いことしたら神様が見てるんですよ。そんな当たり前のこと裁判所に言わせたらダメだよ」

 被告は頭を垂れたまま、裁判官の言葉を聞いていた。検察側は「真の反省がなく再犯する可能性が極めて高い」と、懲役4月を求刑した。
 判決は31日に言い渡される。
     (末崎光喜)


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