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2008年01月23日(水) 00時16分

長崎市長射殺初公判 検察「言論を封殺」 朝日新聞

 長崎地裁で22日あった長崎市長銃撃殺害事件の初公判で、検察側は「不当要求排除を目指した市長を、選挙期間中に射殺した。言論の自由を封殺し、民主主義の根幹を揺るがす重大犯罪だ」と指摘し、事件を社会に対する犯罪と位置づけた。

初公判の傍聴後、会見する伊藤前市長の長女・横尾優子さん(右)と夫の誠さん=22日午後6時19分、長崎市で

 伊藤一長・前長崎市長(当時61)は昨年4月、市長選の最中に指定暴力団山口組系の元組幹部、城尾哲弥被告(60)に射殺された。

 検察側は冒頭陳述で、新たな候補者は実質3日間の選挙活動を余儀なくされ、前市長に投じられていた期日前投票や不在者投票などの無効票が投票数の約8%に達するなど、選挙に大きな混乱を生じさせた——と指摘。被告を殺人罪などに加えて公職選挙法違反(自由妨害)の罪でも起訴した意味を明らかにした。

 事件の影響についても「長崎市では、職員個人で対応したのでは生命をも脅かされる事態になるとの強い危機感が広がった。前任(本島等氏)と2代続けて現職市長が撃たれたことで市民に衝撃を与えた」と指摘した。

 現場で被告を取り押さえた前市長後援会の男性も検察側証人として出廷。「取り押さえた際、被告は銃口を私の方向に向けようとした。憤りを覚える」と証言した。

 被告は知人の業者への公的融資や自身の事故の補償の要求を断られて市に恨みを募らせていた。

 検察側は、前市長の妻十四子(とよこ)さん(61)の「市に不満を持っていたとしても、市長を殺す理由になるのか。なぜ殺したのか、自分の言葉で語ってほしい。できるなら極刑にしてほしい」という供述調書を朗読した。弁護側は「被告には行政対象暴力という認識は一切なかった」と主張。子供のころ新聞配達をして家計を支えた成育歴などを挙げ、情状酌量を求めた。

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 長崎市の田上富久市長は22日、公判に関連して報道陣の取材に応じ、新年度から市役所内に暴力追放に関する部署を設置することを表明した。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0122/SEB200801220014.html